誘惑する唇:愛される女ほど、駆け引きしない。好きな男の独占欲をくすぐった女の秘密
恋の駆け引きなんて、本当はいらない
―急ですみません。今日の夜、少しだけお時間もらえませんか?最後のお願いと思って、聞いてください!
康史へのLINE。「送信」を押した後、真樹の心臓は激しく波打った。
だが、その返事はなかなかこなかった。既読になったのを確認してから返事がくるまで約2時間。長い、長い2時間だった。
―じゃあ、1時間くらいなら。
ようやく届いたその返事を見て、真樹はぎゅっと唇を噛みしめる。
バタバタと仕事を終えて、指定された新宿御苑近くの『バルペロタ』に向かっていると、お店の近くで康史の姿を見つけた。
「康史さん!」
気付けば、声が出ていた。
振り返った康史に近づき、真樹は用意した言葉を伝えようとする。
「あの、あれは本当に誤解なんです。私、本当は違うんです……」
用意していた言葉が、なかなかでてこない。どうでもいいことはポンポンでてくるのに、一番言いたいことほど言えない。
大人になると、正直でいることがどんどん難しくなってくる。
経験がプライドとなり自分の虚像を作り上げ、気づかぬうちに自分で自分の足を引っ張る。
だから真樹は、自分を引っ張る何かを振り払うように言った。
「私が好きなのは康史さんだけです。ずっと、ずっと好きでした」
真樹は、ぎゅっと目を瞑る。これ以上康史の顔を見ることができなかった。
二人の横を、数台の車が通り過ぎる。風で、新宿御苑の木々が葉を揺らす。
普段は耳に入ってこないような音まで、真樹の耳に響いてきた。
「それ、俺が言いたかったのに」
少しの沈黙の後、康史がぽつりと言った。そしてこう続けた。
「なんか、冷たくしちゃってごめんね。あまりにもショックが大きくて。でも、付き合ってるわけでもないから、何か言える立場でもないし。……子どもみたいな態度とってごめん。俺も、ずっと真樹ちゃんが好きでした」
康史はそう言って真樹の肩に手を添えて、ぐっと顔を近づけてきた。そして、そのまま唇を重ねた。
「せめて最初のキスは、俺から……」
照れたように言う康史を見て、真樹も一緒に照れてしまい顔をうつむけた。
少しだけ気まずいけど、なんだか心地いい。そんな時間が流れる。
「なんかさあ、真樹ちゃん最近急に色っぽくなったから心配だったんだ」
康史から意外な言葉がでてきて、真樹は驚く。
「え、本当?何でだろう。あ、もしかして口紅変えたからかな?」
真樹が言うと、康史はおでこをくっつけて囁くようにこう言った。
「じゃあ、俺以外の前ではその口紅、使わないでね」
康史はにこりと笑った。本気とも冗談ともとれる目を向けられ、真樹は戸惑いながらも、美加子からプレゼントされたイニシャル入りの特別な口紅をこっそり思い浮かべた。
そんな真樹をよそに、康史はまた真剣な顔に戻る。
そして、再び唇を重ねた。
―Fin.
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