ドクターラバー Vol.9

惹かれる男と、信頼できる男。“本当の幸せ”を考え尽くした女が下した決断

医者を好み、医者と付き合い、結婚することを目指す。

そんな女性たちを、通称「ドクターラバー」と言う。

日系証券会社の一般職として働く野々村かすみ(28)も、そのひとり。

彼女たちはどんな風に医者と出会い、恋に落ち、そして生涯の伴侶として選ばれてゆくのだろうか?

医者とドクターラバーたちの恋模様は、一筋縄ではいかないようだ。

かすみは、同期の里帆と参加した食事会で、慈恵医大の内科医・城之内(34)と出会う。彼から初デートに誘われるも、病院からの呼び出しですぐにお開きに。その後再びデートに誘われるが、またもドタキャンされてしまう。

そんな折に同期のタケルからも飲みに誘われ、秘かに彼のことが気になっていたかすみは、そのまま一夜を共にしてしまう。しかしその後タケルから連絡がなく、悩んでいたところに、城之内から再びデートの誘いを受けるが…。


待ち焦がれた男からの、今さらすぎる連絡。


―今日、19時に『モルソー』で待っているね。楽しみにしてる。

お昼頃に城之内から届いたメッセージを再び開き、かすみの気持ちはそわそわし出していた。

―あと2時間後ね…

病院近くの六本木ではなく目黒のお店を予約してくれた辺りに、城之内の「今日は退席しない」という意思が伺え、かすみは嬉しく思う。

メッセージを閉じてスマホを机の上に置いた瞬間に、ヴー、とバイブ音が鳴る。かすみは再びスマホを手に取った。

―今日の夜、ちょっと会えない?

タケルからだった。

かすみは驚きのあまり、思わず画面を裏にしてスマホを机の上に置く。心臓のバクバクという鼓動が、耳の方まで聴こえてくる。

何で?という期待と、今さら、という失望が交互に心を行き来する。あの夜から、約2週間ぶりの連絡だった。

その空白の期間、かすみはずっと悩み続けていた。城之内との約束だけをわずかな拠り所として、何とか日々を過ごしてきたのだ。

―よりによって、今日なんて…

このまま約束どおり、城之内と会うか。それとも、タケルに会いに行くか。

かすみの心は豪雨の中を進む船のように、ぐらぐらと大きく揺れていた。

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