ドクターラバー Vol.3

東京私大出身のドクターが行きつけの店で吐露した、内に秘めた葛藤

医者を好み、医者と付き合い、結婚することを目指す。

そんな女性たちを、通称「ドクターラバー」と言う。

日系証券会社の一般職として働く野々村かすみ(28)も、そのひとり。

彼女たちはどんな風に医者と出会い、恋に落ち、そして生涯の伴侶として選ばれてゆくのだろうか?

医者とドクターラバーたちの恋模様は、一筋縄ではいかないようだ。

慈恵医大出身のドクター2人とお食事会をしたかすみと、同期の里帆。かすみは、爽やかで甘いルックスの内科医・城之内からデートに誘われる。

一方、もう一人の無愛想な内科医・浅見を狙うことに決めた里帆。2人のドクターラバーの恋の行方は、どうなるのだろうか。


新郎の元に向かうかすみの視界に一瞬入った、ある男


ヴァージンロードを歩きながら、号泣している里帆を見て、かすみが思わずほほ笑んだ瞬間。

里帆の左隣に立ってこちらを見つめる彼が、視界に入った。

穏やかなような、何かを言いたそうな。
不思議な視線だった。

かすみが正面に向き直ると、新郎が柔らかなまなざしで、こちらに向かって笑いかけている。

新郎に向かって笑顔を返しながら、かすみの頭にほんの一瞬、本人すら自覚していないくらいの速さで、ある考えがよぎった。

―もしも2年前、あの時の決断が違ったら。今、この結末は変わっていたのかな。



「あつ…」

強くふりそそぐ昼の日差しから顔をそむけ、かすみは弱々しくつぶやいた。

夏至が過ぎ、むんとした暑さの気配が徐々に濃さを増している。

雨が大好きで夏が大嫌いなかすみは、梅雨が明けてないのに晴れてばかりの空を、少し恨めしく感じてしまう。

「もうすぐ、つくわよ」
「たかだか10分歩いたくらいで、情けないな」

優しく励ます里帆の声と、からかうようなタケルの声が重なる。かすみはタケルをすっと無視して、里帆にだけほほ笑みかけた。

「ほら、着いたぞ」

かすみの無言の抗議など意に介さない様子で、タケルは颯爽と丸ビルの中に入ってゆく。

今日は同期の里帆とタケルと3人で、丸の内の『アンティカ・オステリア・デル・ポンテ』にランチに来た。タケルが今期のMVPを獲ったお祝いもかねている。

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