2017.08.10
誘惑する唇 Vol.1康史は、同じ会社の営業部にいる31歳。学生時代にはずっとテニスをしていたそうで、今でもたまに、ホテルに併設されたテニスコートを友人たちと借りてプレーしているスポーツマン。
去年の年末にホテルで開かれた、会社主催のクリスマスパーティーで同じテーブルになり、そこで初めて言葉を交わした。
真樹は、初めてとは思えないほど康史に妙な親近感を持てた。まるで、ずっと前から知っている気心の知れた相手のように。
それは康史も同じだったようで、自然な流れで食事に行く約束をして、互いに同期を誘って4人で食事に行った。
康史が真樹に、ただの好意以上の感情を秘めているのは確かだろう。何度か食事を重ねるほどに、その考えは間違っていないと思うようになった。
だが「同じ会社の男性」というのが引っ掛かるのだ。
社内恋愛なんて、本当はしたくない。そんなもの、リスクが高すぎると真樹は思っている。
付き合ったとしてまず、同僚たちに知られたら面倒だ。さらに、別れることになっても居心地が悪くなってしまう。この会社にいる限り「あの人と付き合ってた」という過去がついてまわるのだ。
もう、情熱だけで恋愛するような年齢も過ぎてしまった。だから、冷静に考えるほどに身動きが取れなくなっていくのだった。
食事会で出会った、嫌な男
そんなことばかりを考えていたある日、人数合わせで食事会に参加することになった。場所は銀座の『バラババオ』。
「あれ、真樹ちゃん唇テカテカだね~。このお店、天ぷらはないはずだけど?」
食事会の序盤で、真樹が綺麗にグロスを塗った唇を見ながら、目の前に座った男がそう言って茶化してきた。
竜太という、広告代理店の営業マンだ。
いくら付き合いで参加した食事会とは言え、会社を出る前には入念にメイクを直した。アイラインを引き直し、顔には細かい粒子のパウダーを乗せて、仕上げにグロスをたっぷり塗った。
薄暗い店内では、艶々と輝く唇が女性らしさの象徴だと、真樹も真樹の女友達も信じている。だからこの日の食事会でも、女たちは皆お手洗いに行く度に、競うようにグロスを塗り直していた。
いつも唇が艶めいている女こそ、同性からは「女子力高め」と称されるのだ。
それなのにこの竜太という男は、何もわかっていないくせに失礼な言葉を投げつけてきたばかりか、真樹があからさまにムッとした顔をしても、ヘラヘラ笑っていた。
4人いる男性の中で、顔は2番目にタイプだった。だが、この一言で竜太と口をきくのはやめようと決めた。
それなのに、竜太はことあるごとに真樹に話しかけてきたのだ。
もともと期待なんてしていなかったが、帰りの電車の中で「行かなければよかった」と、思わずにはいられなかった。
【誘惑する唇】の記事一覧
おすすめ記事
2022.07.13
プロ夫婦~作られた輝き~
プロ夫婦:1度結婚に失敗した女が次に選んだのは、収入も年齢も下の男。彼とだったら、理想の家庭が…
2015.09.14
「ふたりのニコライ」―作家・柴崎竜人の恋愛ストーリー
美人の双子に挟まれて 「ふたりのニコライ」第三話
2020.08.23
男と女の答えあわせ【A】
食事会の最中、女がやった行動にドキッ…男が彼女を「手に入れたい」と思った理由
2016.04.01
崖っぷちアラサー奮闘記 written by 内埜さくら
いよいよ明日で最終話!「崖っぷちアラサー奮闘記」全話総集編
2016.11.22
ワセジョ・プライド
ワセジョ・プライド:港区女子って本当にいるんですか?雑草魂で生き抜く美人ワセジョ
2019.12.05
オトナな男
「あなたが、男に弄ばれてしまう理由は・・・」恋敵に言われた図星の一言とは
2016.12.18
由香の秘密
由香の秘密:SATC好きの女がモテないなんて、嘘。港区男子を手玉にとる女の言い分
2016.05.03
僕のヤバい時計
僕のヤバい時計:馬の靴屋は想定外に儲けている…高級腕時計5本、29歳イケメン御曹司
2016.07.10
村上春樹好きな男
村上春樹好きな男:兄の替わりとして眼科医の実家を継いだ彼が、『風の歌を聴け』を愛する理由
2019.03.29
あの子が嫌い
冷酷な男が、初めて情熱を見せた瞬間。内に秘めていた思いを吐露した、29歳女の運命
東京カレンダーショッピング
『かに物語』:〆まで楽しめる雑炊の素付き!蟹の旨みがたっぷりと溶け出すかに鍋セットミニ
『肉のABCフーズ』:黒トリュフ塩付!牛タン&A5ランク黒毛和牛を使った極上ハンバーグ
『東京京橋おばんざい醸』:肉を引き立てる3種の塩!A5黒毛和牛を使ったローストビーフ
『かに物語』:海老・帆立・蟹!ベシャメルソースに、各種海の幸をトッピングした贅沢グラタン
『UMIKARA』:薄切り・厚切り食べ比べ!特製出し汁で味わう若狭湾真鯛の鯛しゃぶセット
『パンツェロッテリア』:具材ごろごろボリューミー!フレッシュな野菜と肉感満載のフライドピッツァ
『オリベート』:黒トリュフ香る、口当たりクリーミーな究極のティラミス
『ミホ・シェフ・ショコラティエ』:日本を代表するショコラティエ―ルが作る、 ショコラ好きのための濃厚ガトーショコラ
『LOUANGE TOKYO』:アート感溢れるビジュアル!口溶けなめらかな大人の生チョコレートエクレア(6種)
『ル・ボヌール 芦屋』:しっとりサクサク!フリーズドライ苺にホワイトチョコをたっぷりと浸透させた新感覚スイーツ