人妻が恋するのは、罪なのか。
裕福で安定した生活を手に入れ、良き夫に恵まれ、幸せな妻であるはずだった菜月。
結婚後に出会った彼は、運命の男か、それとも...?
身も蓋もない、無謀で純粋な恋に堕ちてしまった女は、美しく、ひたむきに、強かに、そして醜く成長していく。
ベッドサイドの灯りをゆっくりと絞り、なるべく音を立てないように、部屋を暗くする。
夫の宗一はこちらに背を向けて、静かな寝息を立てている。菜月は同じくそっと彼に背を向け、柔らかな枕に頭を預けた。
ベッドに横になってから、眠りに落ちるまでの数分、ときに数十分。
菜月にとって、それは一日で一番幸せな時間だ。
“彼”との記憶をこっそり取り出し、飴玉でも味わうかのように、甘ったるい感情に酔う。
悪戯ぽく微笑む彼の表情、少し甘えが混じる低い声、そして、菜月の手首を強引に掴むときの、あの力強さ。
―こんなに細いと、壊しちゃうよ?
彼のセリフが鼓膜に甦り、菜月は思わず息苦しくなる。その一瞬の後、今度は胸が締めつけられるような寂しさに襲われ、居てもたってもいられないほどの焦燥感と虚しさに駆られる。
―どうして、こんな風になっちゃったんだろう...
静かに大きく息を吐きながら、切なく軋む思いに身を委ねた。
自分でも恐ろしいほど、最近の菜月は感情の振れ幅が大きくなっている。
結婚して30歳を過ぎた自分が、これほど身も蓋もない恋に落ちるなんて、嘘みたいだった。
この記事へのコメント
この手の間違いをちょこちょこしてますよね。
名前的にTOKIOの山口を
イメージしてしまうのは私だけ?笑