東京マザー Vol.14

東京マザー:ワーママには仕事を辞める理由がたくさんある。辞めない理由は見つからない

子を産み、子を育て、家を守る。

昔からあるべき女性の姿とされてきた、“良妻賢母”。

しかしその価値観は、現代においてはもう古い。

結婚して子どもを産んでも、男性と同等に働く女性が増えた今こそ、良妻賢母の定義を見直す時だ。

レコード会社で働く佳乃は出産後、時短勤務で復職したが家事と仕事で追いつめられ、ついに離婚を切り出してしまった。そんなある日、あかりが高熱をだしてしまった。


かつて、こんなに胸騒ぎを覚えたことがあっただろうか。

子どもが苦しんでいる姿をみるのが、これほど辛いとは、佳乃にとっては想像以上のことだった。

タクシーが総合病院に着くと運転手に千円札を2枚渡し、「お釣りはいりません」と言って急いでタクシーを降りた。

受付を済ませ、早く名前が呼ばれる事を祈るように待ちながら、あかりをぎゅっと抱きしめる。

病院に漂う独特のにおいが、佳乃の心をさらに乱す。

―ごめんね、ごめんね……。

タクシーに乗っていた時からずっと、佳乃は心の中で謝り続けていた。

病院に到着して約10分後、ようやく名前を呼ばれて診察が始まった。40代と思われる女性の医師に優しい眼差しを向けられ、佳乃の心は少しだけ落ち着いた。

「紹介状は拝見しました。たしかに、肺に合併症が疑われますので念のためきちんと検査しておきましょう。数日入院してもらえますか?」

「入院……」

佳乃は反射的にその言葉を繰り返した。

目まぐるしい状況の変化についていくのがやっとだった。

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