丸の内勤務の証券マン・江森(通称:えもりん)、30歳。おとめ座。
外見はプーさんそっくり、愛されキャラな男。好きな食べ物はハチミツ...ではなく、『ウルフギャング』のプライムステーキ。
港区生まれ、港区育ち、育ちのいい奴らは皆トモダチ。生まれながらに勝ち組な彼は、日本を代表するエリート・サラリーマンとして独身生活を謳歌している。
だが、イケてるはずなのにちょっと拗らせ気味な男・えもりんの恋の行方を追ってみよう。
「キャー、このお肉、超美味しそう~!!えもりん、写真撮ってもいい?いい?」
「もちろんだよ、どうぞどうぞ」
亜美はテーブルに料理が運ばれてくるごとに、まるで少女のように瞳を輝かせ、何枚も何枚も写真を撮る。
26歳、丸の内勤務の受付嬢。大きな瞳に白い肌。亜美は可愛い。少なくとも、先週の食事会にいた女子の中では一番可愛かった。
『西麻布 けんしろう』は、隠れ家めいた和モダンな雰囲気で、さらに全室個室というデートにぴったりな店である。
江森は「ここぞ」という時にこの店を使う。
レモンサワーで酔った亜美の瞳はトロンと垂れ気味で、頬もうっすらピンク色に染まっている。
彼女のとりとめのない話も一貫して聞き役に回ってやっているから、自分の印象はすこぶる良いに違いない。時は金曜21:30。このまま行けば、部屋に誘うのも容易いだろう。
しかし、尾崎牛のミスジ肉の写真を撮る亜美を穏やかな笑顔で見守りながら、江森はすでに決断を下していた。
この女に会うことは、もう二度とあるまい。と。
この記事へのコメント
後味悪い話や登場人物は全くなく、毎回クスッと笑えて、ただ、ひたすらプーさんを応援してました。