ある4人の男たちがいた。
港区で生まれ育ち、多くの女性たちと浮名を流してきた彼ら。
そんな彼らにはそれぞれ、東京で“たった1人”と言える女性がいた。
他の誰にも置き換えられない、特別な女性―。
これは、“たった1人”の女性と出会ってしまった、4人の男の、狂おしくも切ない物語。
29歳になる翔太は、人生のほとんどを港区内で過ごしていた。
小学校から通っている私立のエスカレーター式の学校は、住所こそ港区外であったが、港区から目と鼻の先。
学校が終わり、友人たちと遊ぶのは港区が常だった。
虎ノ門で内科の開業医をしている父の影響で、翔太も幼い頃から医師を目指した。順調に24歳で国家試験に合格し、港区内にある大学病院での後期研修の終了も間近となった。
当初は父と同じ内科医を目指していたが、研修を進めるうちに興味は脳外科へと移り、このままあと数年は大学病院の脳外科に残ることを決めた。
自分の将来像が明確になった頃、自然と人生の伴侶を求めるようになっていた。
これまで、付き合ってきた女性は数人いる。皆、翔太と同じように港区で生まれ育った、良くも悪くも“世間知らず”と言われるような女性たちばかりだ。
結婚相手もきっと、同じような女性を選び、子供も自分と同じように港区で育てるのだろう……。なんとなくそんな風に思っていた頃だった。
特別な女性・優子と出会ったのは。