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  • たった1人の女 Vol.1

    たった1人の女:すべてを手にしたような男が、磨けば光る女性を好きになる理由

    優子とは、幼馴染の智弘に誘われて、あまり気乗りしないまま参加した食事会で知り合った。

    5歳年下の24歳。大学卒業後、就職に合わせて静岡から上京してきたため、東京のことをまだあまり知らない女の子だった。

    銀座にある化粧品メーカーの人事部で働いているというだけあり、透き通るように綺麗な肌を持っていた。

    綺麗な二重、年齢より幼く見える丸顔、よく笑う大きな口。

    決して美人とは言えないが、愛嬌があり、いつも楽しそうに笑っているのに、どこか自信のなさが伺える。その絶妙なバランスに、翔太の目は釘づけになった。

    男女4人ずつの食事会。

    男同士は皆、小学校からの付き合いで、兄弟のように強い絆で結ばれているメンバー。

    それぞれ職業は違うが、男だけで集まることもあれば、この日のように女の子を交えた食事会を開くこともあった。

    翔太たちの食事会のスタンスは、「恋人を探そう」なんて強い意気込みはなく、幼馴染の集まりの中に女の子も交えて、「友達を増やそう」というような軽い気持ちのものだった。

    だからその日の食事会で優子に釘付けになった翔太を見て、智弘たちからは散々冷やかされた。

    だがそんなことは気にならないくらい、その日の翔太は必死だった。

    「私、港区ってちょっと怖いイメージがあってほとんど来たことなかったんだ」

    「六本木ヒルズで一緒に映画を見るの、憧れてるんだ」

    「カクテルが1杯2,000円って、高すぎだよね?」

    そんな風に、今まで知り合ってきた女の子からは聞かなかった言葉が、優子の口からはポンポン出てきた。それが余計に、翔太の気持ちを高ぶらせた。


    優子をもっと驚かせたい。新しいことを沢山教えてあげたい。


    いつしかそう思うようになり、毎回のデートでサプライズを準備するのが翔太の楽しみにもなった。

    喜んでくれると思ったサプライズだが・・・?


    「ごめん、お待たせ」

    待ち合わせの東銀座に5分遅れで到着した翔太は、歌舞伎座を見上げている優子に駆け寄って声をかけた。

    「もぉ~、遅いよ」

    優子は少し怒った顔の後に、一瞬で笑顔を作った。その笑顔はまるで、夏のひまわりのようだ。

    「で、今日は何するの?」

    予想通りの質問に、翔太は無言のまま得意気に歌舞伎座を指差した。

    「え、歌舞伎?」

    「そう、歌舞伎。観てみたいって言ってたよね?しかも今日の演目は、優子が恰好良いって言ってた歌舞伎役者が出てるんだ」

    そう言って、1階1等席のチケットを渡すが、喜んでくれると思っていた優子が、なぜだか不安げな表情を向けて来た。

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