港区おじさんコレクション Vol.5

平日昼間のゴルフ場。港区おじさんの“仕事”と港区女子の“習い事”の秘密

外資系投資銀行でバックオフィスを担う、有希、30歳。

港区の酸いも甘いも知り尽くした彼女に与えられた呼び名は、“港区おじさんコレクター”。

業界のスーパースターである勇人のお気に入りポジションを手に入れ、後一歩を踏み出さずにとの甘い時間を楽しむ。時には慎吾のように銘柄整理も行い、月日をかけて和夫を育てる。

送り迎えがつくのなら、港区を飛び出すこともある。

騒がしい携帯画面。「未読スルー」は女性のマナー


14:00

有希のスマートフォンがメッセージで溢れ始める。
まどろみが襲ってくる午後は、男性の夜のアポ入れタイムだ。

―忙しい?時間あったらご飯でもどう?
―早くあがれそうなんだけど、今日何してる?
―今晩、暑気払いしない?

あえて携帯のメッセージのポップアップを許可している有希は、メッセージを開くことなく内容を確認し、即座に返信するもの以外は未読のままにする。

当日のお誘いの多くは、仕事の目処がついて「誰か」と飲みに行きたい。とか、お誘いを断られてしまって「誰か」と食事に行きたい。といった別に有希でなくても良いお誘いが多い。

行きたくない食事や、距離を置きたい男性に対しての返信は、しばらく寝かせておくに限る。「どうしました?」と返信をする頃には、既に他の「誰か」が確保されていることだろう。これで、相手に恨まれることもなくお誘いを断ることが出来る。

携帯を裏返そうとすると、LBOチームのからのメッセージが目に留まる。

―近々葉山の別荘にクルージングに行かない?良かったら友達も連れてきてよ。

晃とは、採用セミナーで一緒になってから、着々と交流を深めていたが、土日のお誘いは初めてだ。

―いいですね。いつにしましょう?

素早く返信し、誘う女子を思い浮かべる。うだるような暑さが来る前に、日差しを浴びながら甲板でシャンパンを飲むのは、夏の始まりに相応しい。

―来週末はどう?恵比寿駅から湘南新宿ラインで1時間。逗子駅からバスに乗って15分でつくから。葉山マリーナでBBQの準備して待ってるよ。

思いも寄らぬ返信だった。

港区圏内で生活が完結する有希にとって、送迎のない葉山は海外よりも遠い。時間をかけて現地に向かっても、晃以外に待ち受けるメンバーが楽しいとも限らない。しかも、クルーザーが陸に戻るまでの数時間、途中で帰るというオプションを持てないのは恐怖そのものだ。

楽しいかも分からない男性陣と海の上で軟禁状態になるのは、こちらからお断りだ。

有希は、安易に返信してしまった自分の行動を反省しつつ、来週末の天気予報に傘マークがないかチェックすべく、Yahoo!のお天気ページを立ち上げた。

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