銀座美味逸品 Vol.1

クニサダ

銀蕎麦 國定

國定美恵さん

「自分で飲食店をやることになるなんて考えたこともなかった。それが、今じゃ銀座で手打ち蕎麦の店をやってるんだから、人生って本当に面白いものですよね」。そう言って笑顔を見せるのは、今年で開店5年目を迎える『銀蕎麦 國定』の店主、國定美恵さんだ。群馬に生まれ、栃木で育ち、大学卒業後は、ドイツ・ミュンヘンの大手百貨店に勤めた。

「デパート勤務時代は、販売やバイヤーなど、いろいろなことを経験しました。海外に出てみると、日本の良さを客観視できるというか。特に、日本料理の素晴らしさと奥深さに、改めて気づかされたんです。その頃から徐々に、和食の料理人になりたいっていう気持ちが強くなっていった」

もともと、人に物の魅力を伝えることが大好きだったという國定さん。だが、料理人になる道はそんなに容易いものではない。今から始めたとて、15や16の時から修業を重ねてきた職人たちに敵うはずもない……。そんな思いがよぎることもままあったが、思い立ったら頭で考えるよりも即実行。帰国後は、複数の和食店で修業を積み、縁あって新橋の『本陣房本店』で蕎麦打ちを学ぶことになった。

「蕎麦の世界って、基本的には男社会だから、最初は店側も私を採るかどうか悩んだそうです。でも、女の蕎麦打ち職人も面白いんじゃないかって。修業中は、もちろん対等の扱いを受けるわけですから、腱鞘炎になったりして、やっぱり厳しいと思うこともありました。でも、自分のなかで、3年で一人前の蕎麦を打てるようになるって決めていたんです。自分がお客さんに伝えたいことをやるためには、自分の店を持つしかないと」

かくして31歳の若さで独立開店に至ったのだが、「銀座に店を持てたのは、本当に偶然。不動産業をやっているお客さんが探してくださったんです。内見した時にここしかないって感じて、即決しました」と國定さん。開店以来"銀座"という街の恩恵にあずかることが本当に多いという。

「銀座って、街自体も人もすごく懐が深いんです。高級とか、格式が高くて入りづらいみたいなイメージを持たれがちですが、横のつながりが強いから、ある意味、町内会っぽい。昔から"銀座村"なんて言われるのは、そういうことがあるのかも。この街を愛することが、ここで生き続けていく秘訣です」

将来の展望を訊ねると、「体力が続く限り打ち続けます。もちろん銀座で」という答えが返ってきた。

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