エーデルワイフ Vol.4

エーデルワイフ:絵に描いたように幸せな生活を送る新妻の、不穏な涙

2017年の東京を生きる大人の女性が、悔いなき人生を歩むために身につけるべき「品格」とは?

30歳で婚約破棄。未来に絶望した千晶は、導かれるようにして、ナンタケットバスケット教室「エーデルワイス」を主宰する高貴な妻、白鳥雪乃と出会う

雪乃の助言で少しずつ前向きさをとり戻す千晶だが、元婚約者・涼ちゃんから連絡があるたび心乱される

そんな中、「エーデルワイス」で知り合った幸せいっぱいの新妻・結衣が、一人涙しているところを目撃する


幸せな絵に隠された真実


日曜の白昼、プラチナ通り。

白金台はいつ歩いても豊かな空気が充満していて、幸せを絵にしたようだと、千晶は思う。

行き交う人々は揃って満ち足りていて、幸せを自ら主張することはなくとも周囲がそれを認めているのだ。

花々の刺繍が施されたグリーンのカーディガンを肩にかけ、白金台の交差点に佇む結衣もまた、ごくごく自然に「幸せの絵」の中に存在していた。

だから千晶は、彼女がまさか泣いているとは思いもよらなかったのだ。

−結衣さんは、結婚記念日でご主人とデートだそうよ。

ナンタケットバスケット教室「エーデルワイス」で雪乃からそう聞かされていたが、見渡す限り彼女の夫らしき人影はない。

結衣が取り乱すところなど想像もできないが、喧嘩でもしたのだろうか?

「...大丈夫?」

千晶より10cmは低いところにある彼女の小さな肩に手を置くと、驚くほど薄くて華奢で、同性ながら放っておけない気持ちになった。

しかし、しばらく下を向いていた結衣が次に目を合わせたとき、彼女は完全にいつもの穏やかな微笑を取り戻していた。

「千晶さん、びっくりさせてごめんなさい」

少々芝居がかった様子で、困った表情を浮かべる結衣。

「今日、風が強いでしょう。目にゴミが入ってしまって。これだから嫌だわ、ハードレンズって」

普段より饒舌に語る結衣が嘘を言っていることくらい、千晶にもわかる。

しかし彼女は決してそれ以上の詮索を許さず、微笑を保ったままその場を足早に去った。

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