センスや価値観が表れるワイン選びにおいて、手堅いセレクトとなるのが、実はドイツワイン。ドイツワインは、近年、世界中の食通やソムリエの間でも大きな注目を集めているのだ。
そこで、〝音楽界のグルメ番長”こと 小宮山雄飛氏と、東京カレンダー編集長・日紫喜に対し、ドイツワインへの造詣が深いWines of Germany日本アドバイザーの松村由美子氏が、その魅力を伝授!
ドイツワインビギナーの男ふたりが、その特徴・魅力を聞いてみたら、デートに嬉しいメリットだらけだった!
絶品中華とドイツワイン、驚きのマリアージュ!
今回選んだお店は、青山にある人気の中国料理店『礼華 青鸞居』。
「中華にドイツワイン?」と感じる人もいるかもしれないが、驚きと感動に満ちたマリアージュが次々と展開されていったのだ。
◆いま、ドイツワインが美味しいと言われるのには理由がある!
日紫喜:Made in Germanyといえば、高級車のポルシェやメルセデスなど、「高性能」「高品質」など、信頼性の高いブランドが多いですが、ドイツでは、いまどういうワインが造られているんですか?
松村:ドイツワインは甘口のイメージがありますが、実は今は、辛口と赤が非常に増えています。
それには地球の温暖化が影響しています。気候が暖かくなり、ぶどうが完熟しやすくなりました。昔のように、完熟前の”高すぎる酸”のカバーで糖を残す必要が少なくなり、辛口が造りやすくなったんです。
伸びやかな酸、粘らず重くならないアロマティックな辛口が、モダンドイツワインの特徴です。
小宮山:暖かいと甘いワインができるかと思っていたら、そうではないんですね。
松村:”甘い”というより、透明感のある果実味が際立つようになります。
また、世界的に料理が軽やかになっていることに生産者たちが気づき、料理とのマッチングも考慮した辛口がトレンドですね。
松村:さらにドイツでは、若手の生産者も台頭し、35歳以下の「ジェネレーション・リースリング」という生産者団体も創設され、モダンな辛口ワインの生産に取り組んでいます。既存のドイツワインのイメージ革新をはかった、新しいワインが誕生しているんですよ。
日紫喜:なるほど。ドイツのイメージが変わりました。
ところで、そのモダンなドイツワインは他の国でも話題を呼んでいるんですか?
松村:はい。特にアメリカ、オランダが多く輸入しています。最近、イギリスのグルメ誌でも「ドイツのリースリングが人気!」と紹介されていました。日本でもこれから流行ってくると思いますよ。
小宮山:じゃあ、今回の企画はすごく先取りなんですね!
◆1st ペアリング「ピータン豆腐」×「ゼクト」(シュペートブルグンダー)
ここで、初めの一杯となるスパークリングとピータン豆腐が運ばれてきた。
小宮山:お! グラスに注いだだけで香りがけっこうしますね。
松村:ドイツのピノ・ノワール=シュペートブルグンダーで造っているスパークリングです。イタリアだとスプマンテと呼びますが、ドイツだとゼクト。白ぶどうだけだと繊細な感じになりますが、これは黒ぶどうだけでできているので、香りも味わいもしっかりしています。青リンゴの蜜やトースト香がしますね。
小宮山:美味しい! 力強くて、ちゃんとボディがありますね。それに、ピータンって普段は絶対にビールと合わせるんですが、これは新発見!ピータンの複雑な旨味や発酵感が、絶妙に絡み合う。
日紫喜:シャンパンやスプマンテなどもある中で、男性がこのゼクトを選ぶメリットは?
松村:拘っている方だなと思われるはずですよ。ただ流行っているものではなく、自分の好きなモノを知っていて、人の意見に流されない自己がある、って感じ。
小宮山:ただ飲みやすいものを選ぶのとも違いますよね。
松村:そうですね。「これも知ってごらん」という提案がありますね。知らない女性の方が多いはずなので、「ゼクトって?」となり、一緒に探検が始まるようなワクワク感が出てきます。そして実際に飲んでみると、シャンパンのような華やかさもあって気分が軽やかになる。
小宮山:女性は、本当に最初にスパークリングを飲みますからね。料理屋さんには、まだそんなにないから「家でゼクト」っていうのもいいですね。
松村:あ!それはついて行っちゃいますよ〜。
小宮山:えっと、まだ序盤なんで、そんなに東カレに寄せなくても大丈夫ですよ(笑)。
◆2nd ペアリング「海老マヨ」×「白ワイン(ヴァイスブルグンダ―)」
レストランにドイツワインを持ち込むのもオツ
小宮山:実は、10年ぶりの海老マヨです。マヨネーズの味は好きだけれど、それに伴う罪悪感を感じて…
松村:私はけっこうなマヨラーですね~。特にワインの試飲会の後は口が濃くなるので、それに匹敵するようなマヨネーズやおたふくソースを食べたくなります。
小宮山:それ、お好み焼きじゃないですか!
松村:ふふふ。さて、マヨネーズと合わせるならクリーミーな白です。フランスならシャルドネの樽で熟成させたものになりますが、ドイツの場合はどうするのかを知ってほしい。
そこで選んだのがこの白ですが、フランスだとピノ・ブラン、ドイツではヴァイスブルグンダ―と呼びます。トロピカルフルーツやオレンジ、柿のような香りが特徴。酸がリースリングよりおだやかで、やわらかい果実味があるので、クリーミーなものに合います。
日紫喜:これはイケちゃいますね。海老マヨのパパイヤともリンクする感じ。
小宮山:辛口だけれど単純なさっぱりじゃなくて、ふくよかさがあります。美味しくてどんどん飲めてしまう!昼からこんなに飲み干すなんて、青山じゃなくて赤羽とかでやることですよね~(笑)
日紫喜:こんな風にドイツワインと中華を合わせるのは、斬新なことですよね!
松村:変化球ですよね。例えば、お店に相談してドイツワインを持ち込ませていただくというのもありだと思います。中華でもいいですし、和食にも合わせやすいですから。
小宮山:それはお洒落! デートにも接待にも使えますね。わざわざ持参してくれるだけでも嬉しいのに、さらに敢えてドイツワインってなかなかですよ。