夜更けの赤坂で、女はいつも考える。
大切なものは、いつも簡単に手からすり抜けてしまう。
私はいつも同じところで立ち止まり、苦しみ、前を向こうとして、またつまずく。
29歳、テレビ局の広報室で働く森山ハナは、ひと回り年上のプロデューサー・井上と出会う。
ハナは徐々に井上に惹かれていくが、元彼・渉君が 「彼女と別れた」と言って ハナの元へ戻って来た。今日は、親友の葵にそのことを相談する予定だった。
「葵ちゃん。ちょっと相談したいことがあるんだけど」
打ち合わせが終わり、帰ろうとすると、葵は編集長に呼び止められた。
葵は今日、神保町にある出版社に来ていた。葵が担当する化粧品メーカーの、タイアップ記事の打ち合わせのためだ。秋冬に向けて、マットな質感の口紅を7色発売するら......
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