2017.05.21
『鳥しき』の「定番の串」
座右の銘は「一意専心」。当代きっての名店の主として、焼鳥職人の志を常に胸に宿す、その気概を噛み締める。
目黒どころか、東京NO.1とも!美味なる焼鳥の最高峰
良い焼鳥店の串は、焼く前、つまり生の状態で美味しそうと思える。『鳥しき』も、然り。店を入ってカウンターの左側にあるケースに並ぶ串は、いずれの部位もピカピカで、透明感とハリがある。と、美肌を褒める際に頻出する形容詞を並べてしまったが、要するに、美味なるものは美しい、ということだろう。
そんな美しい串を、ビシッと決まった出で立ちと所作で焼くのは、店主の池川義輝氏。目黒に店を構え、今年めでたく10周年を迎えた。
「本当は違うエリアで開く予定だった」のが、ひょんな経緯で縁もゆかりもなかった目黒駅のすぐそば……といっても人通りの少ない路地の奥で独立することに。それが今では人気と実力を兼ね備え、目黒一どころか東京でもトップと謳われるまでになった。
仕事は至って、地道だ。生産者から直送される新鮮な伊達鶏を使い、火の入り方を計算して厚みを調整しながら、串を打つ。もし幸運にも『鳥しき』に行けたときは、ぜひ焼鳥を横から見てみてほしい。
串の上端と下端の肉が小さく、中央に厚みがあるはず。それは、焼き台の奥・中央・手前の火加減を加味してのことなのだ。
さて、今回撮影した4本を焼く場合。最初に焼き始めるのは、つくね。いったん焼き台との間に金網をはさむことで高温にし、表面を焼き固めることから始まる。つくねをひっくり返したら、白身に覆われる前の黄身と卵管である「ちょうちん」をタレにくぐらせて焼き台へ。針金を曲げて自作した専用の器具があり、これをサポーターにして柔らかな卵黄を守る工夫も細やかだ。
その間に、つくねは既に焼き台に直接のせられており、このあたりでうちわが登場。扇いで熱を対流させ、合間にはささみに塩、ししとうに油を施し、焼き台にオン。つくねは2度、3度とタレにくぐらせてこんがりと焼き……と、それぞれの串に異なる仕事をする上、営業中はさらに多い数を客の状況を見つつ焼くのだから、マルチタスク極まりない!
肉に串を打って炭で焼く、と書けば極めてアナログかつ単純だが、その隅々に魂を込める職人池川氏の矜持が、『鳥しき』を名店たらしめている。
全17席のカウンターは、今や焼鳥界きってのプラチナシートだ
この記事で紹介したお店
鳥しき
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