夜更けの赤坂で、男はいつも考える。
大切なものができると、なぜこんなに怖くなるのだろう。
僕はいつも同じところで立ち止まり、苦しみ、前を向こうとして、またつまずく。
41歳、テレビ局のプロデューサーである井上は、ひとりの女と出会う。
彼女の名前はハナ、29歳。ひと回りも年下の女だった。
付き合っていたはずの彼の裏切りから未だ立ち直れず突然泣きだしたハナに、井上はどうするのか?
「…ハナ?」
井上が気づいた時、ハナはすでにぐしょぐしょに泣いていた。
「どうした?」
そう声をかけても、「何でもない」の一点張りで、とりつくしまもない。井上が言葉をかければかけるほど、ハナの目からは涙が溢れ出る。
大体、一目ぼれに近いかたちでハナに告白してい......
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