赤坂の夜は更けて Vol.4

赤坂の夜は更けて:私の彼氏には、婚約者がいた。29歳の女心に深く刻まれた傷跡

夜更けの赤坂で、女はいつも考える。

大切なものは、いつも簡単に手からすり抜けてしまう。

私はいつも同じところで立ち止まり、苦しみ、前を向こうとして、またつまずく。

29歳、テレビ局の広報室で働くハナは、ひと回り年上のプロデューサー・井上と出会う。

深夜に井上を呼び出し、自由気ままに振る舞うハナ。その言動に隠された心の傷とは?


「渉君って、玲奈と結婚秒読みらしいね」

半年前のある日。

他局で働く同期との飲み会で、何気なく言われたひとこと。ハナはその言葉に、思わず耳を疑った。

その日は六本木の『石頭楼アネックス』で、甘い豚ばら肉と相性抜群の、ピリリと辛い火鍋に舌鼓を打っていた。お肉に絡ませた卵がとろん、と落ちそうになって、慌ててそれを口に含ませる。

毎日のように自分の家に来ている男が結婚秒読みで、しかも相手は自分じゃない女の名前。

ハナは激しく動揺した。

「…玲奈ってだれ?」

ハナが思わずそう口にすると、皆の視線が集まった。

“マイペースな自由人”として勝手気ままな言動が許されているハナは、普段滅多に自分から話に入ることがない。

その結果、こうしてたまに口を挟むと、皆の注目が集まってしまうのだ。

「ハナ、渉君と仲良かったのに知らないの?玲奈ちゃんって、渉君の同期で、アナウンサーの子だよ」
「…ふぅん」

そう返すことしか、できなかった。

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