時代は巡りゆく港区
「疲れたから、そろそろ帰ろうかな。」
軽く会釈して立ち去ろうとした時、一人の女の子から声をかけられた。
「凛子さんですよね?色んな方からお話を伺っていて、ずっと憧れていたんです!」
とろみ素材のトップスに、脚の綺麗さが際立つミニスカート。手にはシャネルのマトラッセを、大事そうに持っている。
その子を見て、磨けば光りそうな子だな、と凛子は直感的に感じた。
「伝説の女がいるって、たくさんの方から聞きました。私、いつか凛子さんのようになりたくて!だから頑張って港区に引っ越して来たんです。今は三田に住んでいて...」
三田?一瞬頭がフリーズし、そして思わず笑ってしまった。
「三田は、慶應の学生さんが住む場所じゃなくて?」
帰宅時にも現れる港区内格差
固まっているその子を横目に店を出る。すると目の前に停まっていたブラックカーの扉が静かに開く。
「佐藤様より、凛子様をお送りするようにと仰せつかっております。」
Uberの運転手が仰々しく挨拶する。
通りには、運転手付きのブラック・バンがずらりと並んでいた。それらは全てキングたちのお抱え馬車だ。
港区で行われる誕生日会やパーティーは、皆権力を誇示するかの如く自分の専用車を待たせる。
そのブラック・バンに一緒に乗り込む女性は誰なのだろうか。今日もまた、新たなクイーンが生まれるのだろうか―。
「有栖川公園の方まで。」
走り出した車窓から、さっきまで同じ会場にいた女の子たちの姿が見えた。
大通り沿いでタクシーを捕まえようとずっと手を挙げている子、徒歩で駅まで向かう子。
小さくなる彼女たちの姿を見ながら、思わず応援の意味を込めた笑みがこぼれる。
バックミラーに彼女たちを写しながら、車はけやき坂を静かに走り抜けた。
▶NEXT:4月18日 火曜更新予定
芝は港区の僻地。格下の烙印を押される芝エリア。
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この記事へのコメント
自分を憧れと言ってくれる若い子をバカにする嫌なおばさん。