食事会の翌日、大手町駅を出て日比谷通りを歩いていると、後ろから声を掛けられた。相手はまたしても優子だ。
「美緒、昨日はありがとう!でもなんか、すっごく疲れてる?」
「うん、そうだね。昨日も言われちゃった。さすがに連日だと疲れが溜まるね。そういえば優子って元気だよね。いつも同じように楽しんでるのに、なんで?」
遅くまで盛り上がる日が続いても、優子が疲れた様子を見たことがない。単純に疑問に思い聞いてみると、彼女はにこりとしながら、自分のバッグから何かを取り出した。
「これのおかげかな」
優子の手には『よ・い・と・き』と書かれたパッケージがあった。
「これね、サプリメントなんだけど、食事会の前なんかに飲んでおくといつも通り元気に過ごせるんだよ」
「へえ、そうなんだ」
「これから、歓送迎会とかお花見が増えるから、美緒も飲んでみたら?はい、ひとつあげる」
そう言って優子からひと袋手渡されたのだった。
印象が悪かった男の、とびきりの笑顔
それから1ヵ月後、大学の頃から仲良くしている先輩・千春のホームパーティに誘われた。数年前に結婚した千春は、美緒の憧れの存在だ。
場所は豊洲のタワーマンションのパーティルーム。目の前には大きなレインボーブリッジが望める、絶好のロケーションだ。
最近は『よ・い・と・き』を飲むようになって、優子のようにいつも通り元気にすごせるようになったため、今日も思い切り楽しむ予定。
まだ直哉への想いは引きずっているが、今日のように積極的に外へ出て、早く忘れる努力は続けている。
20人近くが集まった中で、千春を見つけて近づくと、彼女の隣には見覚えのある男が立っていた。
「あれ、あの時の?!」
結婚式の翌日、急遽参加した食事会で「年上に見える」と苦笑いした、あの男だ。
「え、なんで?」
思わず言うと、千春が驚いた顔で言った。
「あれ、美緒ちゃんとアキラって知り合いなの?」
「はい、少し前に食事会で会ったことがあります」
「そうなんだ、じゃあ紹介はいっか」
そう言い残して彼女は移動する時、美緒の耳元で囁いた。
「美緒ちゃん、アキラって口は悪いけど本当はただの優しい男だから、おすすめだよ♡」
状況が飲みこめないまま、アキラと2人、取り残された。美緒も今すぐこの場を離れたかったが、そんな大人げないことはできない。
「まさかこんなとこで会うとは、びっくりですね」
社交辞令をいくつか並べて自然に離れる準備をする。千春はあんなことを言ったが、この男には嫌なイメージしかなく何の説得力もない。
「美緒ちゃん、今日は元気だね。この前は、何か無理してるのかと思って心配してたんだよ」
アキラはそう言って屈託なく笑った。
―この人、こんな素敵な笑顔もできるんだ。
美緒は不覚にもドキリとしてしまった。この前の意地悪な顔とは正反対の、包容力を感じさせる優しい笑顔。
「うん、あの日はちょっと……」
返す言葉につまり思わず口ごもると、彼は照れたような態度でこう言った。
「あの日、本当は大人っぽいねって言いたかったのに、誤解させちゃったみたいでゴメンね。実は、また会いたいと思ってたから今日は本当に嬉しいよ」
少し照れた素振りで、アキラは言った。
その姿を見て、美緒の心の奥深くに居座っていた直哉の影が、蒸発するようにふわりと消えていくのが、美緒には確かに感じられたのだった。
(Fin.)
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