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  • 中目黒2017 Vol.1

    中目黒2017:パッと見はデキる女。男には「無理してる」ようにしか見えない?

    転職したものの、そこは理想とかけ離れた地味な世界


    いざ入社してみると、そこは案外地味な環境で、想像していた華やかな世界とは違っていた。

    先輩たちも雰囲気美人は多いけど、本当に顔の整った人はごく少数。

    ーこれならすぐに、私がブランドの顔になれちゃうかも。

    自分の輝かしい未来に、密かに想像を膨らませた。

    だが雰囲気美人な先輩たちは、異様に仕事ができた。英語の他にフランス語やイタリア語など、3ヵ国語を話す人もザラにおり、メールの返事も数分以内に返ってくる。

    仕事で圧倒的な能力の差を見せつけられ、美奈は焦り、落ち込んだ。

    ―でも、顔だけなら私の方がふさわしいはず……!

    そう思うことでモチベーションを保つしかなかったが、漠然とした不安と不満は確実に美奈の中に積み重なっていた。


    思い切って環境変えてみる……?


    「美奈って、美人なわりに自分に自信がないから、それを隠そうとして変に強がっちゃうんでしょ?」

    ワインを飲みながら一通り美奈の話を聞いた友人は、開口一番に言った。

    「考えてばっかりいないで、髪をバッサリ切るとか、環境を変えるとか、何か思い切ったことしてみれば?」

    「うーん。髪は、5月の友達の結婚式までは切りたくないし、環境変えるって言っても転職したばっかりだし」

    「あ、じゃあ、いっそ引っ越しは?もうすぐマンションの更新って言ってたよね?あ、それかシェアハウスに入ってみるとか!」

    「えー、今のマンション気に入ってるから引っ越しもしないよー」

    現実を忘れるため、何でもない話で女友達と盛り上がる。

    学生の頃から付き合っていた彼と別れて1年。食事会に行ってもピンとくる相手はいない。



    終電より3本前の電車に乗って、美奈は住み慣れた祐天寺の自宅に帰った。

    灯りをつけ、コートを脱いで手を洗う。いつもと同じ繰り返し。居心地は良いけど、このままじゃダメだって自分を追い込みたくもなる。

    ー引っ越しかぁ……。

    大学生の頃から住んでいる部屋を見渡して、じっくり考えた。なんだかしっくりこない最近の自分。思い切って環境を変えるのもありかもしれない。

    美奈はスマホに『シェアハウス 東京』と入力して検索を始めた。

    ーすごい、オシャレ。

    思っていた以上に物件があり、その多くがセンスの良い内装であることに驚き、美奈の想像が一気に膨らんだ。

    その勢いに背中を押されるように、美奈は半年間と期間を区切り、シェアハウスへ住むことを決めたのだった。



    そうして美奈が選んだ街は、隣駅の中目黒。

    中目黒は、会社がある銀座へも日比谷線で1本で行けるうえ、カフェも多く高架下の再開発で活気が増している街。それになんといっても目黒川の桜もあり、ほどよく緑があるアットホームな雰囲気も漂っている。

    今の、迷っている自分でも迎え入れてくれそうな街、それが中目黒だと感じた。

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