高級ワインにも劣らない、スクールで出会う男たち
ちょうど1ヶ月前、美咲は麗子の誘いで、会社の近くにあるパークハイアットの『ピークラウンジ』にシャンパンを飲みに来ていた。
「美咲ちゃん、ワインスクールでの婚活って一番手っ取り早いのよ。」
通っていたスクールで出会った男性と3ヶ月で結婚を決めたという麗子はきっぱりとそう言った。
「どういうことですか、麗子さん。」
美咲はグラスに口をつけるのも忘れ、身を乗り出して麗子の話に耳を傾けた。
「ワインを愛する男性って、もうその時点で条件が保証されているの。年収、職業、ライフスタイルのセンス、海外志向、そして食の趣味。どれもそれなりのレベルよ。高級で上質なワインに釣り合うような、ね。もちろん全員じゃないから見極めが大切だけど」
そう言ってニコリと微笑み、麗子はさらに続けた。
「だからワインスクールに行けば、すでにふるいにかけられた男性ばかりと出会えるの。就職の面接でいうところの、1次、2次面接を飛ばしていきなり3次に行けるようなものよ。」
恋愛を就活に例えたがるのは、麗子の以前からの癖だ。
「美咲ちゃんみたいに見た目もライフスタイルもまあまあ華やかな子って、いわゆるフツーの男性とのお食事会に行ったところで話題が合わないし、相手からも引かれちゃうのよね。」
美咲はここ最近続いている冴えない食事会のことを思い返していた。
つい先週も張り切って参加した食事会では、開催場所が居酒屋に毛が生えた程度のダイニングバーで、テンションはガタ落ちした。その前の週は、地味すぎる男性陣から揃って「美咲さん、理想が高そうですね」と苦笑いされる始末だった。
たしかに麗子の言う通り、ワインスクールでならば不毛な食事会を繰り返すよりも、実りは多そうだ。それに詳しくはないがワインを飲むのは大好きだ。きっと勉強しておいても損はないだろう。
—よし、ワインスクールに行こう。
なんとしても今年中に結婚相手を見つけたい美咲。ワインスクールで麗子のように幸せを掴むと決意して、入学を決めたのだった。
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