たまにしか投稿しないのでついつい反応が気になって、何度もスマホをチェックしてしまう。しかし思いの外反響があり、1時間ほどで21件の「いいね!」と、3件のコメントがついていた。
「いいね!」をしてくれた21人の中に、高校時代に好きだった慶一郎のアイコンを見つける。そして思わぬことに、その慶一郎からLINEが届いた。
「目黒に引っ越したの?俺、雅叙園の近くに住んでるよ!」
慶一郎とは同窓会で何度か会ったが、高校卒業後に2人で会ったことはない。当時の気持ちを思い出し、胸の鼓動が少し高鳴った。
その後何度かLINEのやり取りをしたが、近くにいる割には「会おうよ!」という流れにはならず、少し物足りなさを感じてしまう。自分も一応彼氏がいる身なので、こちらから誘うのも躊躇われた。
インスタへの思わぬ反響。目黒生活を満喫する結衣だったが…?
慶一郎とのやり取りは何となく続いたまま、2週間ほどが過ぎた。あの投稿以来、近くに住んでいるという男の子からの連絡も何件かあったが、慶一郎ほどの嬉しさはない。
一人暮らしは相変わらず少し寂しいが、徐々に楽しんで過ごすコツも身につけてきた。休日は、権之助坂のスタバで朝食を買って目黒川沿いをぶらぶらと歩くのが、最近の楽しみだ。
今日は、目黒川沿いを中目黒まで歩いて行った。高架下のお店や蔦屋書店をぶらついていたら、あっという間に日が暮れてしまった。
家に帰り、一人分の夕食を作る。冬は簡単な鍋物で済ますことが多い。夕食が済み、片づけをしながら湯船にお湯を沸かす。一人暮らしの生活リズムにも大分慣れてきた。
結衣は、1日の中でお風呂の時間が一番好きだ。ここの物件も部屋自体はそこまで広くないが、浴室が広かったのが決め手だった。シャワーで髪の毛から丹念に洗っていくと、一日の汚れはもちろん、どんな嫌なこともすぐ洗い流せる気がする。
先週パッケージに惹かれて買った『BOTANIST』は、アプリコットとジャスミンがふわりと香り、指通りも滑らかで気に入っている。
お風呂から上がり、慶一郎とのLINEを見返す。慶一郎は今、大手百貨店でバイヤーの仕事をしているらしい。
バスケ部の部長で、真面目で、少し天然で。何かを言う度に一所懸命相槌を打ちながら聞いてくれる慶一郎の笑顔が頭に浮かんだ。
―会ってみたいな…。
「来週時間ある?目黒で気になるお店あるんだけど、どうかな?」
祐也のことは頭の片隅にあったが、それを打ち消すかのように勢いよく送信ボタンを押した。
ドキドキで眠れないかもしれない。
でもそれがどんな結果であろうと、何もない一人の夜より全然マシだ。
次週2月24日(金)配信予定
昔好きだった慶一郎。勇気を出して誘ってみたものの…?
結衣の使っている『BOTANIST』はコチラ!