無難戦隊MARCHマン Vol.2

無難戦隊MARCHマン: 通信簿はオール4。 “無難”を極めた、明治大学卒の男

通信簿オール“4”の男。得意もなければ不得意もない。


一通りの挨拶を終えてデスクに戻った東出は、熱心に書類を読み込んでいた。形の良いくっきり二重の目は真剣そのもので、時折机上の書類を見ながら5人を見つめ、考え込んでは今後の戦略を立てていた。

その後、一息ついたタイミングでペットボトルの水を飲み干し、ゴミ箱を探す東出に気付いた福田蒼汰はすぐに駆け寄った。転職初日、どんなキレ者だって分からないことだらけだ。

鋭い観察力で常に人の先回りを心がけ、第一営業部の中で常に成績トップ。この第一営業部は「MARCH卒の吹き溜まり」と言われているが、少なくとも福田がこの中でナンバーワンなのは、間違いない。

「じゃあ、ミーティング始めるか。」

福田蒼汰に礼をいい、東出は颯爽と会議室に向かう。福田蒼汰はノートPCを片手に、すぐ後について行った。

柔軟性に富んでおり、どんな環境にもすぐ馴染むこと。これが、福田蒼汰の長所だ。

小学生の頃から、通信簿は常にオール“4”。得意もなければ不得意もない。たまに体育で「5」を取ったり、美術で「3」を取ることはあったけれど、大抵は綺麗に「4」の数字が並んでいた。

―社交的・協調性がある・バランサー。

27年間、福田蒼汰が幾度となく言われてきた言葉の数々。器用に物事をこなすのは、習い癖のようになっている。新しい上司とうまくやる自信は大アリだ。

初めてのミーティング。沈黙するMARCHマン


「皆の営業日報を読ませてもらった。全体共有の時間が、何でこんなに多いんだ?」

ミーティングでの第一声。東出の発言は辛辣だった。

「毎週月曜日、10時からの営業会議が2時間。水曜日も1時間。」
「それは、売上の進捗共有のためです。」

すかさず説明すると、東出は冷徹な目を向け、こう言った。

「週に3時間、年間にすると144時間。単純計算すれば、この時間を新規開拓に当てられると考えれば、144件分の売上を損失していることになる。」

そう言われると、ぐうの音も出ない。

「それ以外にも見させてもらったが、君たちの仕事の仕方は、非効率的極まりない。」

そこから、東出は滔々と今後の方針を語り出した。

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