結婚願望のない男 Vol.1

結婚願望のない男:死ぬほど好き。ハイスペ彼氏から受けた、30歳誕生日の強烈な洗礼

ハイスペ男子との出会い。白トリュフの香りと共に、恋に堕ちた女


2年前の吾郎との出会いは、定番だが、食事会だった。

英里は総合商社の一般職として長年勤務しているが、同期の咲子は総合職で活躍しており、顔が広い。食事会には、咲子が誘ってくれたのだ。

「今夜は、メンズもお店も最高よ」

咲子の言う通り、西麻布の『マルゴット・エ・バッチェーレ』にて2対2で開催された食事会はハイレベルだった。


高級感と遊び心の混じった店内の妖艶な雰囲気は女心を刺激したし、トリュフの入った宝石箱のようなケースをウェイターから差し出されたときは、英里は思わず歓声を上げた。

「せっかくだから、白トリュフにしようぜ」

目を輝かせる女たちを前に、そんな鶴の一声を発したのは、「都会のエリート」をそのまま体現したような男・吾郎だった。幹事の男も余裕のありそうな経営者で、異論なく賛成した。

古代ローマでは、トリュフは媚薬として使われていたというが、これはきっと本当だろうと英里は思う。

たっぷりと白トリュフのスライスが散った琥珀色のコンソメスープをワイングラスで啜りながら、英里は魔法にかかったように、正面に座るクールな吾郎に恋をしたのだ。

「高飛車男は、結婚向きではない。」親友の予言とは...?


「やだ、ちょっと贅沢なディナーを奢ってもらったからって、あの人たちは本気で恋人にするようなタイプじゃないわよ」

英里が吾郎に抱いた好感を咲子に打ち明けると、彼女は鼻で笑った。

「どうして?」

「どうしても何も、あんなプライドの高そうな男は、女を幸せにしないわよ。自分が好きで好きで仕方がないって顔に書いてあったじゃない。自分は女を選ぶ立場だと思ってる、高飛車男よ」

「そうかなぁ...。カッコ良かったし、素敵な人だと思ったけど...」

「悪いこと言わないから、ああいう人は友達に留めておくのが正解。英里は、早く結婚したいんでしょう?もっと結婚向きの男、今度紹介するから」

しかし英里は、咲子の言うことは聞かず、自分から吾郎に食事のお礼のラインを送った。

その後、吾郎との関係が深まるまでに、長い時間はかからなかった。

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