Age,32 年収上がらなくて。 Vol.2

Age32,年収上がらなくて。:課長になったら年収下がる?ホワイト企業のブラックな真実

20年後の0.2%の確率に、これからの人生賭けられるか?


その店は、小伝馬町の『パーラー305』という店だった。

自然派ワインがウリだというこの店はひっそりとした佇まいで、女性のオーナーがにこやかに出迎えてくれた。

オサムは好奇心旺盛で、常に色んなことにアンテナを張っているタイプ。酒にも相当強いので、こうした店にも詳しいのだろう。

「久しぶりだな。」

高校卒業後、飲み会で2、3回顔を合わせて以来だった。

オサムは大学卒業後、大手電機メーカーに入社。その後は順調に出世街道を歩んでいると、人づてに聞いていた。

「お前さ、第一希望の電機メーカーにあっさり入ったじゃん。何で辞めちゃうの?」

すると、オサムは昔と変わらない、淡々とした口調で語り出した。

「この先の目標が、見えないんだよ。」

冷静なオサムには珍しく、少し悲観的な口調だった。

「30代に入って、役職も上がって、皆からも頼りにされて。ある程度満足してるよ。ただ…。」

そう言いかけて、少しの間、押し黙る。

「うちの会社って、組合が強いから、残業代はきっっちり出る。でもその分、管理職になって組合を外れた途端、年収は下がるんだよ。」

堰を切ったように話し始めた。

「このまま順当にいけば、あと3年、35歳くらいで課長になれるかもしれない。でも課長になったら、年収は下がるんだ。その後、部長に昇進できればいいけど、よくて10年、いや15年後だ。しかも、その確率は1パーセントにも満たない。同期が500人いて、部長になれるのはせいぜい1人いるかいないか。そこを目指すなんて、大博打だよ。」

出世には実力だけでなく、社内政治やタイミング、運。色んなものが絡んでくる。

「…20年後の、0.2%の確率に、お前だったら賭けられるか?」

ぐうの音も出なかった。さすが理系だ。具体的な数字で説明されると、厳しい現実が胸に突き刺さる。オサムは少し間を置き、今度は俺に質問してきた。

「それで、お前は何で転職したいの?」
「俺も、同じような理由だよ。この先目指すべきところが、分からないんだ。」
「そうだよなぁ…。」

転職話をさらに聞いていくと、オサムはどうやら外資系の企業を中心に受けているようだ。

「ここの転職エージェント、結構親身になってくれるから、お前も登録してみたら?」

オサムが勧めてきたエージェントは、「S&P」という、この間俺も登録したところだった。来週、面談の予定がある。

「転職は思い立ったが吉日…。というか、今でしょ!」

昔の流行語に絡ませ、「言ってやった!」と言わんばかりに、にやりと笑う。頭はずば抜けていいが、くだらないギャグが好きな憎めない奴だ。

―外資系はあまり考えてなかったけど、年収上げるにはいいかもな。

オサムの話にすっかり触発され、新たな希望に胸膨らませた。

次週2.1水曜更新
オサムに勧められた転職エージェント「S&P」。そこには強烈なキャラが!?

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。

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