
マリッジブルー、29歳:証券会社美人秘書が「あみだくじ」で結婚相手を決めようとした理由
どんどん深みにハマっていく聡子。裕太の細かいところが気になって…?
しかし、あれほどまでこだわっていた「30歳までに結婚」というゴールを前に怯んでしまった。やはり、信二のことが心のどこかで引っかかっていた。
裕太には「気持ちは嬉しいけれど、あなたはまだ若いし、私で本当にいいのか考えせて」と告げた。
その保留期間、私は信二に連絡してしまった。プロポーズされたと告げると、彼の右目はぴくりと動いたが、すぐにいつもの穏やかな調子で「おめでとう」と言われ、とても悔しい気持ちになった。
その日は結局、彼の家に泊まってしまった。
そこから信二との逢瀬を重ねると、裕太のちょっとしたことが気になるようになってしまった。飲み残しのコップを置いたままにするところや、水回りが汚くても平気なところ、あと何より気になったのが「匂い」だった。
それは、裕太から嫌な匂いがする訳ではなく、信二の「匂い」の方が本能的にしっくりくる、ただそれだけだった。
その話を仲のいい女友だちにすると一蹴された。彼女は信二に振り回されて婚期を逃してしまった私を心配してくれていた。
「付き合いの長い人の方がしっくり来るのは当然でしょ。裕太君が可哀そう。」
確かに、裕太との付き合いはまだ浅い。それでも、その違和感はぬぐい切れなかった。
結婚の決め手は、感情ではなく理性?
私は悩みに悩んだ末、裕太との結婚を決めた。一時は悩み過ぎて、もうこのままあみだくじか何かで決めてしまおうかと思ったが、最後は感情ではなく理性だった。
この先、結婚に積極的ではない信二と付き合っても、無駄に歳を重ねるだけだ。それよりも、若く優しい裕太と結婚した方がきっと幸せになれる。
それに、営業マンとしてはやり手だが、組織に馴染まず孤高を愛する信二より、素直で皆から愛されている裕太の方が上司からも好かれており、会社員としての将来性もある気がした。
マリッジブルーという一時の感情に流されて判断するよりも、「誰と結婚しても同じだ」というある程度の諦めは大事なのではないだろうか。そうでもない限り、皆20代後半の数年間でバタバタと結婚を決められるはずがない。
しかし、私はふとこうも思う。
―裕太と結婚した方が幸せだ。そう無理矢理自分に言い聞かせているだけなのだろうか?
今でも私の腕には信二がプレゼントしてくれた時計が巻きつけられている。
「聡子の時間を独占したい。」
そう言って笑う彼の顔が、時計を見るたびにちらつく。
それでも私は結婚すると決めた。マリッジブルーはひどかったが、今は幸せだと信じている。
結婚したら、すぐに子供を作ろうと思う。私は私の幸せに邁進するしか道はない。
次週11.23水曜更新
結婚直前に浮気をした男の痛すぎる代償
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