「カンパーイ!」
絵美は、現地で待ち合わせていた2歳年上の香奈と一緒に、ウェルカムドリンクで乾杯した。会場内にはどんどん人が入り、比例するように絵美の期待も高まる。
「なんだか、自分に自信がありそうな人ばっかりだね」
テンションの上がった香奈は、会場内を見渡しながら言った。
確かに香奈の言う通り、会場内は自信溢れる美男美女でひしめいている。香奈と一緒にシャンパンを飲んでいると、さっそく一組の男性に「こんばんは~」と声を掛けられた。それを皮きりに様々な人との交流が進むのだった。
出会ったのは、まさに理想通りの相手?!
参加者は全員「恵比寿にゆかりがある人」だからか、すぐに打ち解けて仕事や恋愛、そして恵比寿の話で盛り上がった。数組の男性と話した中で、絵美が1番気に入ったのは外資系金融勤めの雄太(31歳)だ。落ち着いた雰囲気で、初めてなのに特に気を遣わず話す事ができたため、雄太とだけはLINEも交換した。
「絵美ちゃんは笑顔が素敵だね」
そんな事をさらりと言ってしまう雄太に少し身構えるものの、褒められればやはり嬉しい。子供の頃から海外生活を何度も経験しているという彼は、女性を褒めることに慣れているようだが、チャラついた雰囲気はない。
「とにかく仕事が忙しくて出会いも、仕事の事を理解してくれる人もなかなかいないよ。今日もここに来るために、ランチもとらずにいつもの3倍頑張ったんだよ。」
そう言って少し困ったような顔をする彼は、なんだかとてもセクシーで絵美のハートはドキリと大きく波打った。
「この人良いかも」
香奈に耳打ちすると「ライバル多そうだけど、頑張んなよ」と言って、背中を軽くはたかれた。
その後、他の男性たちと話をしていても、絵美は気がつけば雄太の姿を目で追っていた。どの男性と話しても、雄太以上に興味を持てる相手はおらず、雄太が素敵な女性たちに囲まれていると焦りを感じてしまう自分がいた。
―私、今の状態で満足なんてしてられない!
絵美の切実な思いは募る一方だった。だが結局雄太とは、帰り際に挨拶を交わした程度で、絵美は帰宅の途についた。
「どうよ、あの人。あんたすごい気に入ってたみたいだけど?」
香奈に茶化されるように言われた。
「まだわかんないけど、まさに理想通りで怖いくらいにど真ん中の人だった!でもライバル多そう……」
いつもは強気な絵美だが、今日ばかりは弱気になっていた。それくらい雄太が魅力的だったのだ。
この日、恵比寿横丁に流れた参加者も多かったようだが、絵美と香奈は明日の仕事を考えてそのまま帰宅することにした。