軽井沢の冬 Vol.2

軽井沢の冬:眩い都会で見失っていた電機メーカーの男という光

透との結婚は妥協?


「だめ、想像しただけで笑いが止まらないわ。」

ハルニレテラスにある『川上庵』で加奈の公開処刑話を聞いた美希は遠慮なく大笑いした。

「ちょっと美希さん、笑いごとじゃないですよ。」

1つ年上の美希は、加奈の憧れで頼れるお姉さん的存在だ。大学の先輩でもありマリリンのOB訪問で出会った。

美希が軽井沢に引っ越した後も加奈は事あるごとに美希に連絡をとっていて、今回、後輩の恵里香が軽井沢で結婚式をすると聞いた時も返信ハガキを出すより先に美希にコンタクトをとったのだった。

「ところで、彼のせっかくのプロポーズを保留しているのはなぜなの?」

スタッフに手を挙げて、「くるみだれせいろ2つね。」と追加注文しながら美希が聞く。

「それは・・・」

まず、透はおしゃれな店を知らない。いつも焼肉ばかり提案してくるから、最近は加奈がデートの店を決めて予約している。それから、加奈は10代の頃からデートで財布を出したことなどなかったのに3度目のデートで透に3割請求されたのが引っかかる。

そして何より、お酒の失態が数知れない。財布やスマホを失くすのは序の口、同僚と飲んでいると言ったきり連絡がとれなくなったと思ったら朝マンションの入口で寝ていたこともあった。

加奈が過去お付き合いしてきた歴代の彼はもっとスマートだった。もっと言えば、電機メーカー勤務の透より格段に条件が良かった。加奈は結婚したらすぐにでも子どもが欲しいけれど、今の生活レベルを維持しようと思ったら透と結婚しても専業主婦は難しいだろう。

とはいえ、歴代の彼氏を振り返ると、代理店の男には浮気され、駐在帰りの商社マンはそもそも既婚だったし(!)、弁護士の彼は音信普通になったりして今に至るわけなので、比べたって意味ないことはわかっているけれど。でもなんとなく妥協した感が拭えないのだ。

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