宿敵、秘書軍団と鉢合せ!
よく見れば奈緒以外も、会社で見た事がある顔ばかり。皆、久美子や頼樹と同じ広告代理店で秘書として働く女性たちだったのだ。その姿を確認して、久美子は眉間に皺を寄せる。
―秘書軍団!なんで?!それにしても……。
キラキラして、派手すぎず、華があって上品。そして認めたくはないが、その中でも奈緒は一番綺麗で目立っていた。
―どうかこっちに気付かないで……
心の中での祈りも虚しく、奈緒は久美子たちに気付いてしまった。
こちらに気付いた奈緒は、会社でもそうしたようにやはり挑戦的な目を向けてくる。久美子に軽く会釈をすると身体ごと頼樹の方を向けて、久美子の存在は完全に無視された。
「私服も素敵ですね」「今日もかっこいい」「このお店を選ぶなんてセンスが良い」と彼女たちからペラペラと薄っぺらいリップサービスを受けて、上機嫌になっている頼樹にも腹が立つ。
しばらく続く白々しいやり取りを、久美子は冷めた目で見ていた。
奈緒は、最初に軽く頭を下げてきただけで、その後は完全に久美子の存在を無視している。
わざと久美子があまり知らない話題で頼樹と盛り上がり、久美子は完全に蚊帳の外。その様子に久美子のイライラは募った。
「すみません!」
久美子も奈緒たちを無視してワインを注文しようと、大きな声でスタッフを呼んだ。
その声で一瞬テーブルは静まりかえり、頼樹と秘書軍団の視線が久美子に集まる。
「あ、ごめんね。どうぞ続けて?」
余裕たっぷりの笑みを浮かべて、久美子は奈緒に言った。頼樹は「おいおい……」と言いたそうな顔で見てくるがそんなのはお構いなしだ。