• PR
  • 企業戦士タカハシ Vol.3

    企業戦士タカハシ: 左遷人事からの起死回生を掴んだ男。最高峰に向けた戦いを続ける46歳、タカハシの今

    あいつ、会うなり「白髪増えたな」なんて笑いながら言うんですから、本当に感じ悪いですよね。ただ、確かにあいつは、昔とあまり変わることなく若かったですね。

    組織にいる人間と、組織から出た人間。両者の間に流れる時間は同じでも、体感する時間の流れが大きく違うのかもしれません。

    僕は、嫌なことも理不尽だと思うことも、歯を食いしばって耐えてきた。拓哉は一か所にこだわらず、自分が自分らしくいられる場所に移動を続けている。渋谷から始まり、蒲田に広尾まで……。全部聞きましたが、忘れてしまうほど引っ越しをしていた。今は、二子玉川で奥さんと一緒に雑貨屋を経営しているというのだから、なんとも自由な人生ですよね。


    今にして思えば、拓哉はそうして自分を奮い立たせていたのかもしれませんね。
    「住む場所が人をつくる」という言葉があるように、少し背伸びした場所に住むことで「この街に似合う自分になるんだ」って。
    なんでもソツなくこなす奴だと思っていましたが、実はもがいていたのかもしれません。

    僕にとっての”最高峰”はたったひとつ、役員の椅子ですが、拓哉の”最高峰”は、ひとつにこだわらずその時々で変化しているのでしょう。器用なあいつらしいですよね。

    今の僕には、拓哉への嫉妬はもうありませんが、そんな生き方もあるんだなあと
    ただ感心しています。どこまでも器用な男だなって。

    話がそれてしまいましたが、飛行機に乗って赴任後の事を考えると、期待が膨らむばかりです。仕事のこと、向こうでの生活のこと……。
    何といっても社長ですからね。


    コンゴの時と違い、花形の赴任地ですから、気分もあがります。
    今回の駐在については、妻の加奈も息子も手放しで喜んでくれました。
    12歳の息子はインターナショナルスクールに入学予定です。きっと僕以上にヨーロッパ生活を楽しむことでしょう。

    さあ、ちょっとひと眠りしようと思います。
    目覚めればそこはデュッセルドルフ。空港には迎えの車が来ています。
    新しい部下たちに会った早々、疲れた顔は見せられませんからね。



    ―この時、僕はまだ思いもしませんでした。人生ゲームの結末が、あんな事になるなんて。

    次回10月21日(金)最終回
    54歳になったタカハシ。彼は目指す地位を手に入れたのか?!”あんな事”とは一体……?!

    YEBISU

    【企業戦士タカハシ】の記事一覧

    もどる
    すすむ

    おすすめ記事

    もどる
    すすむ

    東京カレンダーショッピング

    もどる
    すすむ

    ロングヒット記事

    もどる
    すすむ
    Appstore logo Googleplay logo