息子は、僕より英語が上手くなってくれました
電器メーカーの経理で働いていた経験を持つ彼女。当時拓哉が付き合っていたサエコのように派手ではありませんが、公務員のご両親の元、質実剛健を絵に描いたような家庭に育った彼女には僕と同じ香りがしました。
コンゴ赴任の打診があったとき、上司から「こういう途上国に駐在する際は結婚しておいた方がいい」と強く勧められたこともあり、当時付き合ってまだ1年ちょっとの彼女にすぐにプロポーズしました。
さすがに結婚するなり「開発途上国に赴任する」と言って、彼女の両親を説得するのには少しばかり時間を要しました。ですが僕ひとり、僻地に単身赴任で行かせるのは、あらゆる面で差し障りがあるだろうということで最終的には認めてくれました。
駐在中に子供にも恵まれ、いま4歳の息子がいます。
僕に似て、鉄道のプラレールが大好き。ある意味、将来有望かもしれません(笑)。インターナショナルスクールの幼稚園に入れていたこともあり、僕より英語が上手い自慢の息子です。
実はこの冬、コンゴから帰国したんです。
というのも恥ずかしい話ですが、体調を崩してしまったんです。
コンゴで現地従業員のストライキがあって、その対応に追われているうちに激しい頭痛がして…気づいたらフランスの病院に緊急入院させられていました。
医者からは高度なストレスが原因の脳溢血と言われましたが、ストレス?って感じで自分では自覚ないんですよね。そんなものなのでしょうか。
駐在の任期満了は来年3月だったのでそこまではいたいと主張したんですが、上司から「幼い息子を残して死ぬつもりか」って諭されて仕方なく帰国の途につきました。
「次の部長にはタカハシくんを推薦しとくよ」
体調崩して帰国なんて、会社における僕の今後は大丈夫かなと思いましたが、久しぶりに出社した本社では、思いのほか英雄扱いでした。コンゴの現地従業員のストライキを無事に収束させ、現地における当社の発展に大きな貢献を果たしたということで、部内でスピーチまでさせられましたよ(笑)。
久しぶりにちやほやされて、正直、ちょっと浮かれています。
実は今夜、鮨屋で担当役員と会食だったんですが、「次の部長にはタカハシくんを推薦しとくよ」なんて言ってもらったりして…。
体調は崩しましたが、苦労した甲斐あったってものですね。
社畜といわれようがなんだろうが、僕にとって出世は人生における喜びのひとつなんです。同期200人の出世競争を一歩ぬきんでて、”最高峰”である役員を目指す道に、また一歩近づけた感があって気分いいですね。
部長昇進の内示は来年の春ごろでしょうか。今からその時がとても楽しみです。
次回、10月7日(金)更新予定
42歳になったタカハシは、部長昇進を果たしているのか?!