社内恋愛をしている同期の久美子と頼樹(よりき)。
お互い仕事が忙しく、会う時間はあまりない。
「でも自分たちは大丈夫」なんて思っていたのは久美子だけだった?!
ある日、頼樹を狙う、自分とは正反対の女が現れ久美子の心は乱されるのだった。頼樹はどちらを選ぶのか?!
負けられない女たちの戦いが、今始まる……!
「久美子さ…最近ちょっと女を忘れてる感じがするんだけど。」
恒例の週末デートの途中、『ボンダイカフェヨヨギビーチパーク』から帰ると、恋人の頼樹に突然そう言われ、久美子は戸惑った。大手広告代理店で忙しく働く久美子からすると、休日くらいリラックスしたいし、長い付き合いの頼樹なら分かってくれていると思っていた。それが突然、どうしたのかと久美子は驚いた。
付き合って5年になる久美子と頼樹は、同期入社で営業職を務める28歳。互いに仕事が忙しいこともあって、最近のデートは2週に1度くらいのペースが当たり前。だが、会う回数が少なくても、仕事が充実している久美子は全く気にしていなかった。だから今回の彼の一言に、久美子の心はざわつき始めた。
ー え、そんなにダメ……?急にどうしちゃったの……?
何度も心の中で呟き、久美子が頼樹の発言に悶々とした思いを抱えながら数日が過ぎたある日、彼が言った言葉の真意を知ることになった。
総合職と事務職、どっちの女がモテるの?
久美子は、頼樹から借りた名刺入れを届けに彼の部署を訪れた。すると、頼樹が可愛らしい女性と話している姿が目に飛び込んできた。その女性は、久美子とは対照的に女性らしく柔らかな雰囲気を醸し出している。
肩より長いストレートの髪は、傷みとは無縁と言わんばかりに光沢がある。メイクも髪型も服装も、清潔感が溢れている。久美子が一瞬見ただけでもそう思ったのだから、頼樹を含めた男性たちが彼女をどう思っているかなんて、手に取るようにわかってしまう。
それを裏付けるように、頼樹が彼女と話す時の嬉しそうな顔ときたら……。久美子が軽く蹴飛ばしたいと思ってしまうくらい、彼の顔は緩みきっている。
ー 何あの子、会社で馴れ馴れしくし過ぎなんじゃないの。頼樹もデレデレしてるし。ああいう清純そうな子の方が、実は遊んでるんだから。
締め切りに追われ余裕のない久美子は、心の中で悪態をつきながら思わず軽く舌打ちしてしまった。