執行役員リサとマリコ Vol.1

執行役員リサ:「バリキャリ」なんてもう古い?28歳、女性執行役員誕生の裏側

CNA代表取締役社長・平尾太一「今の働く女性たちにとって、最適なロールモデル」


リサを執行役員に、と推したのは平尾だった。女性初の執行役員。もちろん狙いは様々あった。

現在、CNAの時価総額は2,000億円ほど。さらなる成長を目指し、M&Aに力を入れている。そんな平尾が目に付けたのは、昨年成立した女性活躍推進法。これからの企業の価値基準の一つとして、女性管理職の引き上げは重要な指標の一つとなってくる。

そこで目をつけたのがリサだった。「ラスカル」のヒットも世間的にも十分認知されている。ヒットメーカーの20代女性社員が執行役員に。この抜擢は間違いなく話題になる、そう踏んだ。

もちろん彼女の実力や人柄は、誰よりも平尾が分かっていた。

性格はさっぱりしており、平尾相手でも一切物怖じしない。酒に強く付き合いもいいため、飲み会での失敗談やエピソードも多い。

仕事で数々の実績を残しているため、一見サバサバ系のキャリアウーマンかと思われがちだ。しかし、プライベートでも仕事でも自分の失敗談をあけすけに話すため、皆すぐ警戒心を緩ませる。

一度、「ラスカル」のヒットを労う意味で、サシで飲みに連れて行った。すると、仕事の話は数分で終わり、気づけばリサのプライベートな相談になっていた。

「社長!私だって幸せになりたいんです!」

酔いが回ってくだを巻く彼女に呆れながら、最後はタクシーに押し込んだ。「リサさんと飲みに行くと大変です。」という噂は聞いていた。こんな調子でいつも皆と飲んでいるのだろう。

翌朝、二日酔いで真っ青な顔をしたリサが社長室にやってきて、「すみませんでした!」と勢いよく言う彼女に思わず苦笑したのを、今でもよく覚えている。

しかし、仕事は非常に熱心だった。その小さな体のどこにエンジンがあるのかと思うほど、ブルドーザーのように働く。実際、「ラスカル」がヒットするまで失敗も多くあったが、彼女の決して諦めない姿勢が社内の協力体制を作っていった。

また、これからの働く女性のロールモデルとしても最適なバランスだった。彼女を見る限り、特に出世願望が強いわけではない。「バリキャリ」系でもなく、ゆとり世代が目指す「ゆるキャリ」系でもない、普通の女の子でも「手が届く」ような存在だ。

一方で、少しばかりの心配もあった。

平均年齢が30歳前後のCNAでも、28歳の女の子が執行役員にもなれば、さすがにやっかみの声があるだろう。平尾自身、前に在籍していた会社で至上最年少の取締役に抜擢されたが、大変な苦労をした。

そうした不安も多少あったが、きっとリサは乗り越えてくれる。そう思い直した。

新・執行役員リサに出された課題とは?


そんな平尾から再度呼び出された。出されたお題はこういうものだった。

「担当はラスカルチームが在籍するデジタルメディア事業部。しかし今期は大幅な赤字の見込みだ。1年以内に四半期営業利益を10億円にしてくれ。」

−1年以内に!?

あまりの難題に、思わず頭を抱えた。

次週9.22木曜更新
就任初日から頭を抱えるリサ。この難題にどう立ち向かう!?


<注記>この作品はフィクションであり、実在の人物をモデルにしたものではありません。

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