東京いい街、やれる部屋3 Vol.1

東京いい街、やれる部屋3:24歳で憧れた街、中目黒。40代独身男が未だ住み続ける理由

否が応でも思い出す元彼の言葉…。


待ち合わせ場所は、恵比寿のウェスティンホテルだった。事前に好きなものを聞かれ、「鉄板焼き」と答えたら『鉄板焼 恵比寿』を予約してくれていた。

以前、「鉄板焼きが好き」と言ったら元彼・シンジはすごく嫌そうな顔をした。

「素材が良くなきゃ旨くない鉄板焼きが好きなんて、金がかかる女だな。」

そう言われればそうだな、と妙に納得してしまったのだが、今思うとシンジは本当に偏屈で嫌な男だった。

それでもこんな風に思い出すなんて、何だかんだ吹っ切れてないのかも…。複雑な想いを抱きつつ、エレベーターに乗った。

今日は、独り身になって初めてのデートだ。しかもずっと憧れていた人と。気を取り直して修二の元へ向かった。

初デートで彼の家に?下心を感じない誘い文句とは


修二とのデートは、完璧だった。仕事の話が主だったが、彼の仕事に対する熱い想いを聞き、ますます好きになってしまった。

修二は今年で42歳。早稲田大学を卒業後、大手メガバンクに就職。しかし編集者への夢が諦めず、2年足らずで転職。そこから男性ファッション誌で編集の仕事を始める。時計好きが高じて時計特集を担当するようになり、徐々に広告の仕事が増え、広告プランナーとしての独立を決心したらしい。

「僕が思う時計の魅力はさ。」

チャーミングな垂れ目の目尻をさらに下げ、その優しい雰囲気からは想像できないような低い声で言う。

「時を刻む時計には、その人なりのストーリーが隠されているんだよね。」

-どうしよう、落ちるかも。

心の中でつぶやいた。

デザートとコーヒーをもらい、最高だったデートも終わりに近づく。もう少し一緒にいたい気持ちもあるが、初めてのデートなのでここで切り上げるのもアリだな、と考えを巡らせる。

そんなことを考えながらゆっくりコーヒーを飲んでいると、修二が時計のコレクションの話をし始めた。彼が持つ時計たちは、家一軒分相当の値段になるらしい。

見てみたいです、と合いの手を入れると、彼は目を輝かせながら見に来る?と聞いてきた。その目に一点の曇りもない。

少し警戒しながらも家一軒分の時計を見たいという好奇心が勝り、タクシーで中目黒にある彼の家に向かった。

この記事へのコメント

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HTB
それは、、、凄い。
でも意外にそういう人って仕事できるんですよね
2018/06/25 22:325
No Name
東京いい店○レル店 という書籍が女子大生時代付き合っていた8歳年上の広告会社の彼氏の部屋に置いてあるのを発見し、即別れました。
「俺ってスタイリッシュ!俺のことデル・ピエロって呼んで!」の発言は若かった私には余りにも衝撃的過ぎました。
2018/04/14 23:373

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