土曜日
On Saturday
PM7:00
一度ホテルへ戻り、 初日にアイオン・オーチャードへ買いに行ったシンプルなミニドレスに着替えた真美が、嬉しそうにクルクル回っている。
予選はマリーナエリアを一望できる『LEVEL 33』から観戦する計画をしていた 。
左側には小さく見えるマーライオン、目の前にはマリーナ ベイ サンズが見える。そして右側は金融などが入るオフィスビルと、日本人の知人も多く住むセイルやマリーナ ベイ スイーツなどのコンドミニアムが立ち並ぶ。
高層ビルの隙間を走り抜けるナイトレースはシンガポール・グランプリならではだ。ここ『LEVEL 33』では幻想的な夜景とF1を満喫できる。
さまざまな表情を見せるシンガポールの街並み。マリーナエリアではスタイリッシュな都会を味わえ、リバーサイドではカジュアルなバーやレストンとともに心地良い自然が楽しめる。チャイナタウンの独特の雰囲気も、エリアごとによってガラリと変わる街の表情も、修二はすべて大好きだった。
真美もシンガポール・グランプリに夢中だ。きっと彼女にとっては予選も本戦も関係ないだろう。興奮気味に駆け寄ってきた真美を見て、修二は思わず笑顔になる。
土曜日
On Saturday
PM10:00
「今夜は忙しくなるよ」
そう言い真美の手を引き、『ポディアムラウンジ』へと向かう。
ここぞとばかりに気合が入り、 ドレスアップした真美を見て改めて惚れ直した。
やっぱり真美は綺麗だ。女性がドレスアップすると輝く理由が分かった気がした。
「ずっと憧れてたパーティーなの。有名人も多くて、正真正銘のVIPパーティー。数あるアフターパーティーの中でも、こことアンバーラウンジは絶対行きたかったの!」
シンガポール・グランプリ開催中は街中が輝いている。その中でも特に人気で格式の高い『ポディアムラウンジ』は会場に入ると眩しい位に華やいでいた。ドレスアップした一流の人が集う場所にいるだけで、何だか自分もそのレベルにいる気分になれる。
「誰に会えるかな?レーサーも来るらしいし。あーもう最高」
シンガポール・グランプリならではの華麗なるアフターパーティー。 真美はすっかり心を奪われ、人間観察とファッションチェックに大忙しだった。
しかし、その会場にいたのは華やかなセレブ達だけではなかった。また、慎吾がいた。