2025年のワークスタイル Vol.1

2025年のワークスタイル:AIが支配する社会。そして僕らは仕事を失う!?

VRで全ての欲望を満たす。結婚に夢も憧れもない


2025年、男性の平均寿命は81歳、女性は88歳まで伸び、今後も右肩上がりに長くなる予測だ。竜也が平均寿命まで生きるとして、あと46年もある。年金が貰えるのは80歳と、男性の平均寿命とほぼ同じなのだから笑ってしまう。それも微々たる額しかないのだから、年金制度は破綻したも同然だ。

竜也は結婚しておらず、現在恋人もいない。結婚に対する夢も憧れもない。家事ロボットが文句も言わず掃除や炊事をこなす。休日に1日中ベッドでゴロゴロしても、飲みに行って明け方4時に帰っても文句も言われない。


休日はVR(バーチャル・リアリティ)で色々な体験をするのが楽しみだ。ヘッドセットを装着し、ゲームの世界に入り、世界中行きたい場所に行き、臨場感たっぷりの映画を見る。セックスがしたくなれば家にいながら、やはりVRで解消できる。専用のセットを揃えて好みの女の子とプレイを選ぶのだ。一人暮らしの部屋の中で、すべての欲が満たされる。

竜也のように、家事はロボットに任せ、自宅で様々な体験ができて、充実した休日を過ごせるようになったこともあり、生涯未婚率(50歳時点で一度も結婚したことがない人の比率)は男性29%、女性20%と、平均寿命と同じく止まることを知らない右肩上がりだ。反して出生数は下がり続けている。

「これから先の人生を考えると、本当にもうお先真っ暗ですよ。どうやって生活していけばいいんだ。多くの仕事はAIで済んでしまう。街には僕のように路頭に迷った人が溢れている。今から医者や教師になるなんて無理だ。」

竜也は落ち着きを取り戻し少し冷静になったが、冷静になって考えれば考えるほど、その先行きは暗いことがわかる。

「すべては自分の傲慢のせいか…。」

独り言のように呟き、また天井を見上げた。



2025年、竜也の身に起こったことは、世界の至る所で起こっていた。仕事を失い、絶望の淵に立っている者たちが世界中に溢れている。

だが一方で、2000年代初頭のIT寵児のように、AI寵児が生まれたのも事実だ。この匂いを敏感に嗅ぎ付けていた者たちは、その恩恵を存分に受け取っている。

時代のうねりに飲み込まれ、気づくのが遅かったと嘆く竜也。では彼は、いつ気付いていれば、この憂き目を免れることが出来たのだろう。彼が10年前の自分にアドバイスできるのなら、どんな言葉をかけるのだろうか。
耳をすませば、彼の声が聞こえてくるようだ。

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