
タクシー代の秘密:時は2000年の東京。プロ女子大生はタクシー代だけで暮らせた。
その後、参加した男性の一人から「今度は違うメンバーで食事しよう」と連絡が来た。これは自分が試されていると思い、キレイどころの女子大生仲間に呼びかけ、翌週には4対4の“お食事会”を開催。予約された会場は、女子大生ならば憧れたミシュラン三つ星のレストランだった。
前回同様、フルコースを噛み締めたあとは、そこで出会う新規の男性と連絡先を交換。また別の男性から「今度は……」と誘われ、新しいメンバーでのお食事会。次から次へと新しい出会いの場に恵まれた。
高校生のころ開いていたマクドナルドでの合コンとは違い、ひとつ上に上がっただけで出会う人、見るもの全てがこれまでと違う。美味しい食事をご馳走してもらえるだけではなく、タクシー代という名のお小遣い。世の中にはこんなにおいしい話があるのかと実感した。
花金には1日に10万円を荒稼ぎるすることも。
味を占めた私たちは、バイト感覚で一日数件の誘いをハシゴし、生計を立てるようになった。一緒に回る友人の目的は出会い、人脈作り、レベル上げ、暇つぶしと異なったが、いい思いをしたいというところは常に同じ価値観。スケジュールは綿密に、相手へのリスペクトも忘れない、それがモットーだった。
花金ともなれば誘いはいくつもあり、自分たちにとっても稼ぎどき。1件目に19時開催の食事会で二代目社長から3万円をもらう。
21時半からの広告代理店とのお食事会でタッ券(宅建のようだが、タクシーチケットの意味。近年発行されている企業は激減。)を回収。
23時半頃からは終電過ぎまで外資金融とのカラオケに混ざり、さらに2万円の収入を得るなんていうこともあった。
もちろんこれで終わることもなく、深夜2時には夜遊び好きなスポーツ選手や、仕事上がりの芸能人を相手に。さらに誘いがあればそっちにも顔を出す。
たとえタク代は期待できなくても、人脈作りと割り切ればなんの痛手もない。しかしなかには、頭に”売れない”がつく俳優や芸人など、金銭的に余裕のない職種にぶつかることもあった。彼らとの飲み会はタク代どころか、割り勘の恐れがあるのでそこには細心の注意を払う。
見切りをつけたくなったり、眠気に耐えられなくなればそこでゲームセット。そのあとは都内に住む彼氏や友人の家にお泊まりするか、カラオケラウンジで始発を待つ。どうしても自宅に帰りたいときは、一枚のタッ券を2〜3人で使い、神奈川から千葉、埼玉と経由して帰るのだった。
こうしてプロとなった女子大生たちは、大学の講義を終えると、男ウケを意識したエビちゃんOLへと変身し夜の港区へ消えて行く。
たった一夜で2〜6万円、多いときは10万円を荒稼ぎする。ヘタにバイトをするよりもお金なる。緊張のあまりフルコースの味がわからなかった自分はそこにはなく、存在するのは一人のプロ。ピッチには今日も”お食事会”の希望者で殺到している。
2000年の東京は、プロ女子大生にとっては、そんな景気がいい時代だった。
次回:ライブドア事件前夜の2005年頃のタクシー代の秘密に迫る
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