2016.05.06
タクシー代の秘密 Vol.1今宵もまた東京の至るところで、出会いを求める男女が戦を繰り広げている。
楽しい時間のあとに男性が取る行動としてスマートと讃えられる”タクシー”術。
お金を渡すのか、一緒に送っていくのか、それとも……?
学生時代から30歳に至るまで、通算2500回もの「お食事会」に参加した元“プロ女子大生”の優子が、タクシー代の支払い事情、いわば「タクシー代の秘密」に関する、歴史的変遷を考察する。
初回は(プロ女子大生にとっては)第二のバブル時代と言えた2000年のお話。
ただの女子大生がプロになるには相応しい時代だったと言える。
第二のバブル期到来!港区がバブっていた時代
今から15年ほど前の2000年代初期。
楽天の三木谷氏、サイバーエージェント藤田氏、元ライブドアの堀江氏などを筆頭に、ITベンチャー企業の若手起業家が続々と現れた。メディアでも騒がれていた、いわゆる“IT・ベンチャーバブル期”。
その当時の私は現役女子大生。大学入学後、新入生対象のサークル勧誘や新歓コンパに誘われ、若さが溢れる“コール”で泥酔するような日々に、正直うんざりしていた。
そんなとき知り合った慶応卒の5歳年上の女性から「各大学のミスコンを集めたサークルに入らない?」と誘われた。彼女はいわゆるキレイ系でそういうところにも顔が利くと、感度の高い女子大生のなかでは話題。そんな人に誘われたならば、と興味津々で会合に顔を出したのが始まりである。
西麻布の会員制レストランで開催されたその”お食事会”には、初々しさ残る女子大生5名。スーツを着た30〜40代の男性陣5名が揃った。名刺を見れば外資金融勤務、ベンチャー社長、大手企業の御曹司など、これまでの人生で出会ったことのない人ばかり。
このときの私はフルコースの味がわからなくなるほど緊張していた。家でお茶漬けでも食べてるほうが性分にあっていると思うか、このフルコースを存分に味わってやろうと思うのかで、これから自分の行く道は変わるとも思った。もちろん後者を選んだ私は緊張を一緒に飲み込み、少しでも自分にとってプラスの時間にしようと誓ったのである。
2時間かけて食べ終えたあとは、連絡先交換。全員の番号をしっかりと手に入れ、今日のミッションは終わらせたつもりでいた。スマートな彼らは二次会に誘うこともなく「そろそろお開きにしようか」と場を締める。時間は21時半。当時、千葉の実家に住んでいたが、終電まではおおいに時間があった。このあとは反省会かな……と思っていた矢先、当たり前のように紙幣を渡されたのである。
「これで帰って」
そう言った手元には3万円。やった!という嬉しさより、初めて出会った男性から大金を受け取ることに恐れを感じた。まだ電車もあるし、タクシーを使ってもこんなにかかりませんよ!と躊躇する私に「女の子を電車で帰すわけにはいかないから」そう言い放ち、紳士に対応してくれる。
レストラン前には送迎タクシーがすでに手配されており、ひとりずつ乗り込んでいく。じゃあ、と乗ったものの、このお金で自宅まで帰るのはさすがに気が引けた。しばらく走ったところで降ろしてもらい、学生らしく満員電車に揺られその日は家路についた。
これがいわゆるデビュー戦。勝利したのかは定かではないが、ここが人生の分岐点だった。
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