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  • 新米弁護士 倉木麻美 Vol.3

    新米弁護士 倉木麻美:女友達が掴んだ、優雅なセレブ主婦生活に何を想う?


    セレブ主婦 vs 働く女の、静かな闘いの行方は?

    エリカは、西麻布に新居を構えていた。Googleマップで検索して、たどり着いた先には、見るからにハイグレードなタワーマンションがそびえ立っていた。一瞬、足元がすくむ。

    (カンペキに武装したから、大丈夫……。)

    そう言い聞かせて、背筋を伸ばしてエントランスに入る。

    今日に至るまで、麻美は涙ぐましい努力をした。『エストネーション』で流行りの服を揃え、ボロボロだった肌も、エステでなんとか甦らせた。美容室では一番高いヘアトリートメントを受けて、死にかけていた髪をツヤツヤに仕上げてもらい、晴れの舞台で履こうと決めていた『クリスチャン・ルブタン』だって今日のために下ろした。

    高層階専用のエレベーターで25階まで上がり、インターホンを押すと、カジュアルながらも一目で上質さが分かる、リラックスした格好のエリカが出迎えてくれた。リビングの扉を開けると、20分前に到着したという舞子と里香が『アルフレックス』のソファに腰掛けていた。

    食卓には、豪華なメニューが並ぶ。マッシュルームのサラダ、白身魚のブレゼ、牛肉のタリアータ、塩レモンのクリームパスタ……。どれも、白いフリルのエプロンを身につけたエリカの手作りだ。

    まずは、シャンパンで乾杯。エリカと授乳中の里香は、ジンジャーエールをグラスに注ぐ。

    「エリカ、おめでとう!」
    「ありがとう♡ 久しぶりにみんなに会えてうれしい〜!」

    料理を食べながら、エリカの近況報告を聞いた。

    「旦那の両親も妊娠をすごく喜んでくれて、ベビー服を大量に買ってきてくれるの。まだ生まれてもいないのに。」
    「旦那が掃除・洗濯は、ハウスキーパーさん任せでいいよって。私はやりたいんだけどね。」
    「旦那がサプライズ好きで、この間もジュエリーをプレゼントしてもらったの。」

    エリカは幸せを隠すことなく、容赦なく「女の幸せ」をまき散らす。

    「エリカはいいなぁ〜。」
    「いい旦那さんと結婚できて、本当に幸せ者だよね。」

    そんな風にエリカを羨む舞子と里香も、麻美に言わせれば、十分セレブ主婦だ。
    ソファに置かれた舞子のバッグは『セリーヌ』のものだし、里香がさりげなく着ているシャツは『シャネル』のもの。

    月1回は子供を実家に預けて旦那と星付きレストランでデートをしているという里香の手には、控えめながらも綺麗なネイルアートが施され、とても子育て中の女性には見えない。そこには、麻美に最近不足している”心の余裕”が確実にあった。

    完璧に「武装」したはずなのに、自分がいつの間にか負け犬気分になっていることに、麻美は気付いた。

    「みんな、女の幸せを満喫していて羨ましいよ」

    嫌味とも本音ともつかない言葉が思わず口をつく。麻美の言葉に、3人は顔を見合わせた。

    「なに言ってるの。この中で一番輝いているの、麻美じゃない」

    「えっ?」

    エリカの意外すぎる言葉に、麻美は目を丸くした。

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