広尾ヒマダム Vol.3

広尾ヒマダム:「美咲さん、あなたお父様とこのまま仲良くするなら身の振り方を考えなさい」

前回までのあらすじ

広尾に住むヒマダムこと三隅澄美は、夫の別宅で自分が暇を出したお手伝いの薫がいることに憤り、婿養子の夫を遠ざけようとしている。

借り物社長の夫の代わりに、会社の経営は弟に任せればよいと考えている能天気なヒマダムは、でもどこかで夫を恋しくも思っていて?……

前回: vol.2 広尾ヒマダム:プチ家出した先で、夫の秘密を知る

美咲さん

お元気? あなたがスイスから帰国する意思がないことをお父様から聞きましたよ。あなた、お父様とは仲良しですものね。今日はお父様のことで、とても重大な相談があるの。すごくショッキングな事実を伝えなくてはいけないのが忍びなくて情けないわ、とっても。

この前のメールで、水天宮の『ロイヤルパークホテル』に滞在していると書いたけど、まだそこにいます。

水天宮の辺り、広尾や麻布の辺りとちがって、坂がなくていいですね。お散歩にはちょうどいいですわ。

ずいぶんと歩いて、柳橋の方まで行ったら、屋形船が停まっていました。覚えている? クルーザーをチャーターして、目黒川をお花見クルーズしたことがありましたね。あなたは、川の匂いがイヤと言って、早く降りたがったけれど。

そうしたら、お父様が「空からなら、川の匂いはしないだろう」とおっしゃって、会社の坂田さんのお坊ちゃんも連れて、ヘリコプターで空から東京の桜を楽しんだのでしたね。取り回しのよいヘリが東京では勝手がよいものです。

そういえば、この近くに、うちの車を預けているところがあるの、あなた、行ったことあったかしらね?

草津さんといって、個人でフェラーリの並行輸入をやっていらしたのだけれど、売った車のメンテナンスも自社でやりたいというから、おじいさまがお金を出して、メンテナンスができる設備のあるディーラーになったのですよ。

彼の会社の隣がパーキングになったと連絡があったので、メンテナンスしていただくついでに、うちにある車をまとめてそこに置かせていただくことにしたのです。メルセデス、マセラティ、ちょっと前に出たピンクのクラウンもそこに置いています。

野ざらしという訳にもいきませんから、パーキングの上に屋根をつけて、壁はガラス張りにしたら、ヤナセのショールームか何かとまちがえていらっしゃる方も結構いらっしゃるみたいです。


草津さんの会社に行ったら、ちょうど草津さんがいらして、お花見ドライブに行くことにしました。

「お嬢様(草津さんは、私のことをいまだにこう呼ぶのですよ)、どれになさいますか?」って。

おじいさまが買った日産のスカイラインGT-Rも、草津さんがちゃんとメンテナンスしてくれているから、今も調子がいいみたいです。でも、もうGT-Rの隣っていう歳でもありませんから、やっぱり今日の気分は『アルファロメオ・ブレオ』かしらと思って、そうしましたわ。

今年は暖冬だったから、桜の開花も早くて、ホテルオークラから、ANAインターコンチネンタルホテルの方に下っていく坂のところも満開でした。千鳥ヶ淵もきれいでしたよ。

それから、椿山荘……。目黒川の桜を見て、目黒雅叙園に着いたら、草津さんがいきなり頭を下げてきました。すみませんと言って。そうしたら、なんとお父様が現れました。

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