待っていたのは「幸せの黄色いクマさん」ゲーム
24:30。ボトルワインを開けた6人は、程なく酔いが回っていた。
これも、健太郎の「2口飲んだらすぐにグラスを注ぐ」という過剰なまでのサービスが、一気に酔いを加速させたのだ。下品なコールや、大学生がやりそうなゲームせずとも、お酒を飲ませていくのが銀座ルールだ。
「せっかくだし、心理ゲームみたいなのやりましょうか。題して、『幸せの黄色いクマさん』ゲーム。」
―なんやそのネーミングは…。―
どうやら説明を聞くと、女子は男子に、男子は女子にそれぞれ、クマ・ネズミ・アヒルといった、某キャラクターのコードネームを付けていき、質問に対して当てはまる対象をコールしていく、というものだった。合コンでよくあるあのゲームである。
「じゃあ、この中で一番、料理が上手そうな人だれだとおもいますかー?」
裕美子が率先して男性陣に質問をした。
話を聞いていると、実家暮らしの裕美子は明らかに料理が出来そうな感じではないのだが、私に一票くださいと言わんばかりの表情だ。繰り返すが、実家暮らしのクセに。だ。
ちなみに、裕美子についているコードネームは、あのアヒルのキャラクターだ。
他の二人の女性には、リスと犬のコードネームに対応している。
「じゃあ、男性陣一斉に行きますよ。せーのっ…!」
シンゴともう一人の連れの綾人は、「リス」と「犬」をコールし、健太郎は「アヒル」をコールした。
「誰が誰だか全然わからないねー(笑)」
そういって、裕美子は全員に一票入ったこと、というよりは自分に一票入ったことにまんざらではないようだった。
「じゃあ、次はこの中で、一番顔がタイプな人はー?…」
そうやってゲームが進んでいったのだが、どうにも健太郎だけが、どの子がタイプなのか全くわからないままゲームは終盤となった。
ハニーハントは成功するのか!?健太郎の策略とは…
「じゃあ、最後に銀座でのこのゲームの特別ルールなんですが…。」
そういうと、健太郎は追加ルールを話だした。
「最後に、お互い誰がどのコードネームだったかを当てあいましょう。先にもし男性陣が当てたら、この後二次会いくってことでいいですね?(笑)」
◆
結論からいうと、健太郎の適格な推理の元、相手が男性陣につけたコードネームを見事に的中させた。
―基本的に、キャラクターのネーミングでゲームを始めた時点で勝ちだったんですよ。なぜなら僕は小熊系男子ですから(笑)―
健太郎には案の定「黄色いクマ」の名前がついていた。あと二つを予測するのは…やはり簡単だ。後は、全員に気持ちよくテンションを上げてもらうべく、質問は基本的に「均等に票が入るように」返すのが基本だという。
―ふつうに質問に答えたらあかんのか…。知らなかった…。―
そうして、テンションの上がった一向は、銀座ルールにのっとり、そのまま朝までハシゴしてカラオケまで行き、飲み、騒いだ。
しかし、気付けば健太郎は、裕美子とは別の一番人気でかわいかった「リス」とともにどこかへ消えていた。
思えば、あのカラオケで健太郎が歌っていた、あの人気バンドの「ねえ、クルミ?」の歌詞が、「リス」へのラブコールだったのかもしれない、と今になって気づく。
一体、奴は何だったのか。銀座の幻とも言える小熊とのハニーハントは、こうして幕を閉じた。




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