東京札幌物語 Vol.2

東京札幌物語:希(23)、8割の罪悪感を抱きながら、合コンの誘いに揺れる。

上京した女心は、つるべ落とし・・・?


実は、明日初めての「合コン」というものに、参加します。

同期・眞希子から誘われました。眞希子は、静岡出身の女の子です。大学入学を機に上京したので私より4年間東京の先輩ということになります。「CanCam」などで読者モデルをやっている、同期の中でも目立つ華やかな女の子です。研修のチームが同じになったことから仲良くなりましたが、センスも良くて、明るくて、ユーモアもあって・・・同期ながら、憧れの女の子です。

一気に仲良くなって、眞希子と、例の二階堂くんと3人でランチに行った時に、合コンの話題になりました。

ー合コン行ったことないんだよね。ー

そう伝えると、お店に轟くほどの声で2人は顔を見合わせて絶叫しました。本当に顔から火が出るほど恥ずかしかった・・・二人は、何度も、矢継ぎ早に質問を重ねて、ネタでもぶりっ子でも虚言癖でもない事を理解すると、その場で、2人幹事の合コンをセッティングしてくれました。

二人のあまりの行動力にあっけにとられていましたが、「彼氏がいるから・・・」と断ろうとすると、眞希子は

「あぁ、地元の恋人・・・それは、半年以内に別れるよ。」と笑顔で言いました。



眞希子は、高校時代、付き合っていた彼がいたそうですが、地元の大学に進学した彼と、遠距離になりました。「大学入っても心は変わらない」そう誓ったものの、新芽が芽吹き緑眩しいゴールデンウィークの頃には、帰省を取りやめて、新しい友達との二子玉川でのバーベキューを優先させたことを自嘲気味に話してくれました。

上京した女心は、つるべ落とし。秋の空に例えた女心なんて生ぬるいほど、上京した女性の心は一気に冷めるのだと言います。

サークルや、飲み会、新しい世界で出会う新しい男の子たち、トレンドが溢れていて、足が棒になるほど歩いても、すべてを見終わることがないファッションビルにセレクトショップ。それらの華やかな彩りに、地元と、地元の彼氏が急速に色褪せていったと言っていました。

「大海に出たら、最後。鮭じゃあるましい、元の川になんて戻れないし、戻り方もわからない。」

地方では、国道沿いの没個性のファミリーレストランや、イオン、しまむらや、ヤマダ電機がエンターテインメントになってしまって、コンビニでさえ、デートの「目的地」となってしまう、そんな世界には、怖くて戻りたくないのだと言います。


「希も、そうなるよ。まぁ、まぁくんは置いておいてさ、合コンくらい、社会見学として、一回はこなしておかないと。」


強引な言い方のように見えて、ちゃんと痛みを知っている眞希子に対して、「やっぱり合コンにはいかない。」そう言うのは容易かったはずです。だけど言えなかったのは、きっと、まぁくん以外を探したい、などという淫らな気持ちではなく、東京の女性、まだ見ぬ新しい世界への探究心があったからだと思います。

彼氏がいる女性としての貞操と潔癖さを守りたい一方、北海道の大地が育んだ自分の良心は、合コンに参加したことくらいで破られない。そんな逃げ道を用意して眞希子の誘いに乗ることにしました。

眞希子は、面白そうに目を輝かせてウキウキとしだし、二階堂くんは、複雑そうな表情で私を見ていました。男性は、どうしても、まぁくんの立場に立ってしまうのでしょうね。


おっかなびっくりの及び腰のような心。

8割の罪悪感と、残る2割の感情は何と表現したらいいのでしょう。

高校1年生のとき、「両親が留守にしている」というまぁくんの家の2階にある彼の部屋で、初めて一線を越える寸前の、あの怖さと好奇心が同居した感覚。

ぎゅっと目をつぶって、「大人の女になるんだ」と彼の首に手を回した時の気持ちと似ている気がしました。




仲の良い友達もできて、東京での生活に、戦々恐々としながらも最初の一歩を歩き出した希。上京した女心は、あっという間に、地元から離れるというが、希は、心のどこかで自分だけは違うと思っているよう・・・次週、眞希子と、二階堂が開く、初めての合コンに参加するのか?


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