女優とディナー Vol.1

女優とディナー:川口春奈は「忍者ディナー」で本当に口説けるのか?(1話読み切り)

さて、薬のおかげでなんとか平常心を取り戻した私が向かったのは大宅文庫でした。

大宅文庫という単語を初めて聞く方もいらっしゃるでしょうが、いつか女性芸能人とデートをしたいと考えるあなたにとっては最も重要な作戦拠点となるので、左肩に「大宅文庫」とタトゥーで刻むなどして、忘れないようにしてください。

大宅文庫というのは八幡山にある、「過去に発売されたすべての雑誌が読める図書館」なのです。

大宅文庫に到着した私は、目にもとまらぬ速さで年間会員のカードを取り出し、風のような軽やかさでパソコンの前に座り「川口春奈」と入力したところ170件の雑誌がヒットしたので片っ端から読んでいきました。

その結果、川口春奈は「魚肉ソーセージの皮を早くむくのが得意」(ザ・テレビジョン2009.10.16号)「催眠術師の川上剛史の催眠術にまったくかからなかった」(アサヒ芸能20015.2.5号)などの貴重な情報が続々と明るみに出たのですが、私が特に注目したのは次の情報です。


「一人で花月に足を運ぶほどのお笑い通」(SPA!2013.3.19号)

「京都に遊びに行ったとき、電車で大阪まで足を延ばして吉本新喜劇を見てきた」(関西ウォーカー2015.07.28号)。


――そう。川口春奈はお笑い好きなのですが、ここで注目すべきは「花月」と「吉本新喜劇」というワード。つまり彼女は、コッテコテのベタな笑いが好きなのです!

その答えを導き出した瞬間、脳天に落雷が落ちるような感覚を覚えた私は、静まり返った大宅文庫の2階でこう叫びました。


「川口春奈ゲットォ!」


と、同時に大宅文庫の司書たちが一斉に私をにらみつけましたがその視線は全く気になりませんでした。


薬を飲んでいたから


です。

そして私は大宅文庫を矢のようなスピードで飛び出し、この店に電話をしたのでした。


『NINJA AKASAKA』


ここは赤坂見附にあるエンターテイメントレストランで、忍者の格好をした店員が料理を出すたびに「忍者ギャグ」を繰り出してくるというトチ狂ったお店なのです。

錦糸町で知り合ったブラジル人がどうしても行きたいと言ったので一緒に行ったところ、そのブラジル人は「笑い死ぬんじゃないか」っていうくらい爆笑してましたからね(しかも料理もしっかりおいしいという!)。このとき私の中では


外国人が笑う = ベタ = 新喜劇的な笑い


という公式が出来上がりました。

加えて、私が過去に書いた恋愛本の取材では「お店の店員さんと仲良くできる人に優しさを感じる」と語った女性が多数いました。

つまり、忍者ギャグを繰り出す店員に愛のあるツッコミを入れつつ場を盛り上げれば「優しさ」と「面白さ」を同時にアピールできるというわけです。

これはまさに、恋愛忍法「店員を相方に、変わり身の術」だと言えるでしょう。

(イケる。これで間違いなく川口春奈が歓喜するディナーになる!)大宅文庫の外の無人の駐車場で一人、武者震いをする私がいました。

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