東京☆ビギナーズ Vol.1

東京☆ビギナーズ:28歳大阪からの上京。「ノールックいいね!」に愛はあるのか



最初に選んだ街は中野坂上。1LDK40m²、家賃13万円の、少し単身者には広めで、そして中野区にしては少し高めの家賃のアパートに住むことにした。

なぜ中野でその広さの家を選んだのか。一つは、入社7年目とはいえ仕事はイチからのスタート。あくまで通勤先の新宿を中心とした生活を覚悟していた。

そしてもう一つは、地方との家賃のギャップだ。関西時代は、今の半分の家賃で今以上の広さの家に住んでいたこともあり、とにかく家具が大きく、数も多かった。そのため、広い家を選ばざるを得なかった。シングルベッドとはとても言えない大きなそれを、捨てるに捨てられなかったのは、まだ少し地元への未練があるからなのかもしれない。

大手ネット広告代理店とはいえ、今の年収は700万円弱程度。大手総合商社や大手総合系広告代理店と比べるとやや低い。営業成績によるインセンティブの上下があり、それなりに成果を上げていたので同業種の中では待遇は良い方だとは思うが、厳しい世界であることに変わりはない。アパートに荷物が届くまでの時間ですら、多少の不安を覚えた。

「とりあえず、久々に東京にいる友達に連絡でもとるかな…。」

とはいえ、いきなり直接連絡できるような仲のいい友人は少ない。

会社の本社同期ともめっきり交友が減っていた彼にとって、せめてものアクションとして、SNSで自分が転勤した旨を投稿するとともに、居住地情報の変更のお知らせを、さりげなくフィードへと流し込んだ。

数分後…。

「あかん、ノールックいいね!ばっかやで…。」

さすがにSNSに投稿しただけで、過去の友人から都合よく飲みの誘い…あわよくば合コンの誘いなんて来るはずも無かった。加えて、28歳という本人も気にしている微妙な年齢によるところも大きい。

同年代の友人らにもいよいよ結婚の波が本格的に来ており、また仕事に関しても海外赴任が決まった者や、独立して会社を起こし昼夜問わず働いている者と、とにかく様々なライフステージの変化がある年だ。シンゴの急な転勤に対して、暖かくわざわざ向こうからメッセージを送ってくれる暇な人間など、なかなかいなかったのだ。

ー転勤、無理にでも断っておけばよかったのだろうか…ー

ネガティブな考えがよぎった瞬間、携帯電話からメッセージ着信のお知らせが鳴り響いた。

『優子です。覚えてますか?先輩。ついに東京に来たんですね!遊んでください!』

それは昔、自分を慕ってくれていた大学時代のサークルの後輩からだった。


次回12月7日更新予定第2話:一足先に上京していた「東京の先輩・優子」に東京の洗礼を浴びる!?

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