やまとなでしこ 2015 〜極上の結婚〜 Vol.14

やまとなでしこ2015 迫る決断の日・・・桜子が唯一愛した男とは

前回までのあらすじ

27歳の桜子は「(並みの)結婚をした女は負け犬」と考え、持ち前の美貌と教養とセンスで「極上の結婚」を狙っている。某企業の次期社長のポジションにいる交際相手・隆弘からプレ・プロポーズを受けたものの、何だか、上の空の桜子。理由は、謎の男「司」からのメッセージ。「誕生日を空けておいて欲しい」と言われた桜子は更に動揺する。司とは一体・・・??

前回:前回:本命からのプレ・プロポーズ?!そのとき桜子は何を思う?

司と出会ったのは、大学2年生のときだった。


当時から桜子は、「女子大生」ブランドを最大限利用し、男たちからの客観的な目線を理解し手堅くコンサバな赤文字系のファッションにピンヒールで登校していたが、大学キャンパス内で、よく見かける異質なグループがあった。

そのグループは、帰国子女が多いようで、個性的なファッションで異彩を放ち、よくも悪くもとにかく目立っていた。桜子が重要視している世間の評価や、損得勘定と別の次元で、自由気ままに振舞う集団を「自分の人生に関係のないもの」として無視していた。

そんなある日のこと。

代理店の男と銀座ミキモトビルの最上階のレストラン『ダズル』でデートをし、夜遅くまで口説かれていた桜子は、朝一の英語の授業中、つい居眠りをしてしまったのだ。

「Ms.Sakurako、Please Answer」

イギリス人教授に名前を呼ばれて目が覚めると、クラス全員の視線が桜子に注がれていた。派手な身なりで男に迎合するファッションで着飾った桜子は、真面目で地味な一部の生徒たちから日頃からよく思われていなかったようで、ここぞとばかりに軽蔑に似た視線が投げかけられ嘲笑が漏れる。

功利的な桜子にとって、女友達は特段必要なく、そんな桜子に救いの手を差し伸べようとするものは誰もいない。

「えっと・・・・・・」

皆が桜子の次の言葉を、失敗を待ち望んでいるように見えた。怒られることを覚悟した次の瞬間、前の席にいた男が後ろを振り向き、無言で、「republicanism」と殴り書きのような字で書かれたスケッチブックを桜子に渡した。

—・・・教えてくれてるの?—

どんな質問かもわからず、書かれた英語をダメもとで、そのまま読み上げるとイギリス人教授は笑顔で言った。

「correct!OK、Next Question!」

ほっとし、桜子は、教科書を開き、すぐさま次の質問に備えた。



授業が終わると、桜子は、目の前の男に話しかけお礼を言った。

「さっきはありがとう。すごく助かりました。」

振り返った男は、中庭で時折見かける例の異質なグループの中の一人だった。ダボダボのDCブランドのTシャツに、色落ちしたデニム。頭にはサングラスが乗っかっていて、首には大きなヘッドフォン。桜子が今まで出会ったことのない人種だった。
当時桜子をデートに誘ってくる男たちは、皆揃って、仕立てのよい細身のスーツに、デザイン性を重視した重厚感のある時計、よく磨かれた靴を制服のように纏っていた。

司は、桜子の言葉に答えることなく、まっすぐに桜子の目を見た。色素の薄い透き通るような目だった。男性の目を、綺麗だなと思ったのは、後にも先にもそれが初めてだ。

「ねぇ、腹、減ってない?」

突拍子もない質問に面を食らった桜子だが、懐にひょいと飛び込んでくるような子供のような無垢さに心を許しつい頷いてしまった。その日、五反田のバーガージョップ『フランクリン・アベニュー』で、他愛もない話で盛り上がり、気づけば店内は2人だけ。ハンバーガーとコーラ一杯で閉店まで居座っていた2人を迷惑そうに店員が見つめていた。

その1週間後、同じイギリス人教授の授業中「I LOVE YOU」と書かれたスケッチブックを受け取り、そこから3年、おかしなファッションをした司と、コンサバファッションの桜子という異質なカップルは、兄弟のように家族のように片時も離れることなかったのだ。


転機は、秋の夕暮れのように忍び足で、でも幕が落ちるかのようにあっという間に訪れた。

【やまとなでしこ 2015 〜極上の結婚〜】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ