やまとなでしこ 2015 〜極上の結婚〜 Vol.5

やまとなでしこ2015 正攻法では落ちない男は、奇襲攻撃で落とせ!?

前回までのあらすじ


27歳の桜子は「(並みの)結婚をした女は負け犬」と考え、持ち前の美貌と教養とセンスで「極上の結婚」を狙っている。某企業の次期社長のポジションにいる交際相手・隆弘を手堅く押さえつつ、更なる高みを目指し、同期の美穂が組んだ飲み会に参加する。桜子の狙いは、最近メディアに引っ張りだこの若き経営者・国分与一。隙を見て、国分の隣を陣取ることに成功した桜子だが・・

「昼は淑女、夜は娼婦」じゃ落とせない。極上男の攻め方とは?

国分は、他の経営者と違って寡黙で純朴だった。
身なりだけは、上質なものに身を包んでいるが、中身はいたって堅実で、他の二人とは一線を画し静かにワインを飲んでいる。

国分は、Asatsuyuを飲み干し、白に移っていた。ワイングラスの中に鼻をすっぽり入れてしまって、香りを楽しんでいた。そのサマは、まるで樽の中に顔を突っ込むプーさんのよう。

「国分さん、次は、何にしますか?また、白のボトル何か頼んでもいいですか?」

その言葉を聞いた美穂と香織が、グルメ経営者たちとの会話を止めこちらを同時に振り返る。

そしてボトルが運ばれてくると仲居さんを制して、桜子は、ボトルを手に取った。そして、国分に煌々ときらめく液体を注ぐと、国分は、グラスの柄に軽く右手を添え支えた。桜子は、上目遣いに国分の目をしっかりと捉えて一言呟く。

「今夜は、たった一人の人に出会えた気がする・・・」

桜子は、添えられた小首の手首にちらりと視線をやり、ウブロの時計が右手に巻きつけられていないことを確認する。次の瞬間、手を滑らせたボトルからこぼれ出す液体が国分のシャツの袖にこぼれた。

「あ!!!!!!!」

桜子は大きな声を出し、慌ててバッグからハンカチを取り出す。濡れた袖口をふき、もう片方の手で国分の手をぎゅっと握った。

「あぁ・・!私どうしたのかしら。国分さんのとても良いワイシャツを汚しちゃって・・・どうしましょう。国分さん・・本当ごめんなさい」

美穂と香織は顔を見合わせ、「お見事」と小さな声で呟いた。


落ち着いた国分も、突如として訪れたハプニングに少し動じているようだ。しかし、汚れたシャツの心配ではないこととは、ほのかに赤みがさした頬を見れば一目瞭然。意表をついた接近戦と、ぎゅっと握られた桜子の手の熱さに戸惑っているのだ。

—正攻法では落ちない君子も奇襲攻撃では時として色に溺れるもの。—

「国分さん、こんな良いシャツどうしましょう・・・あ、私の家近いので、すぐに洗わせてください!さ、急いで・・!!」

有無を言わせぬ桜子の勢いに飲まれ国分は席を立つ。

美穂と香織は、またもや、顔を見合わせて、深くうなづいた。

......


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