個性派名店が揃い踏み!外さない東京の中華12選

単なる刺激ではない、四川料理に対する愛情と敬意『蜀彩』

経堂

何事にも通ずることだが、刺激も過ぎると、だんだんと飽食気味になるものである。ただ、世の中には、クセになる刺激というものも確実に存在する。

料理人としてのスタートは決して早かったとは言えないが、その“種”が心のなかに芽生えたのは、わりに早期であった。子供の頃、親に連れられて行った四川料理店で、はじめて雲白肉に出合ったときの感動を今でも忘れることはないという。

四川名菜 鴨の紅茶漬け燻製香り揚げ。皮目はパリッと香ばしく、身はしっとりとジューシー

「昔からおつかいで買いものに行くことが多かったから、どんな食材を使っているかというのがなんとなくわかったんです。どこでも手に入るような普通の豚肉を、こんな美味しい料理にできるのかと。子供心にすごく感激したのを覚えています」

村岡拓哉氏が世田谷区・経堂に自身の店『蜀彩』を構えたのは2011年10月のこと。胸のなかで大切に育ててきた“種”がこうして花開くまでには、様々な紆余曲折があったという。一生をかけて情熱を注げる仕事を考えたときに中華の料理人という答えに行き着いた。

成都式汁無し坦々麺。本場四川に伝わる味を独自にアレンジ。奥の深い味わいで後を引く旨さ

遅咲きを承知で25歳からのスタートを決意できたのは、やはり一生をかける覚悟あってのことだ。30を目前にして原宿『龍の子』に入店、その後、本場の空気を肌で感じるために四川省へと渡った。

帰国後は再び『龍の子』へ戻り、新宿の『川香苑』などを経て、独立へと相成った。村岡氏の原動力は、単なる“刺激”ではなく、四川料理に対する愛情と敬意。料理はときとして、作り手以上に雄弁だ。

甘海老と四川漬物の炒め。甘海老のプリプリした食感が楽しめる。油通しの妙を感じるひと品。メニューは一例

カメ出し紹興酒。高度酒として知られる白酒のほか、お茶の種類も豊富だ

オーナーシェフの村岡拓哉氏

経堂は「とくに土地勘があったワケではない」が、農大通り商店街の名物店に。開放感のある空間には、テーブル席のほか8名用の小上がりも用意している

積み重ねた経験と才能を発揮し、四川料理の道をひた走る若き担い手『仙ノ孫』

西荻窪

ユニークな店名は、八百屋を営んでいた奥様の祖父、仙太郎氏にちなんだものだとか。『龍の子』や『目黒雅叙園』などで修業を積み、さらには上海でも研修を重ねたご主人の早田哲也氏。その実力のほどは、メニューを彩る多彩な料理アイテムからも伝わってくる。

名物の豚ヒレ肉の黒酢炒めに砂鍋獅子頭といった上海の代表的な逸品から麻婆豆腐、水煮牛肉などおなじみの四川菜、そして黒板メニューにはラム肉のクミン炒めといった清真料理的ひと皿まで、思わず目移りしてしまうこと必至。

内臓類の四川風土鍋煮。香りと辛みがせめぎ合う複合的な味わいが魅力。シェフの力作。メニューは一例

しかも、広々とした厨房で鍋を振るうのは、ご主人ひとり。その堂々たる体躯同様、供される皿もいずれ劣らぬ説得力とパワーに溢れている。

中でも圧巻は、豚耳や豚タン、胃袋、ハチノスを四川の辛い鍋に仕立てた川国毛肚火鍋だ。赤黒く染まったスープから立ち上る四川料理特有の香り。

目にしみるような芳香の正体は桂皮や陳皮、甘草、にんにく、クミン、沙姜に小回香、八角など15種の漢方薬だ。これらを豆板醤や唐辛子の粉末で炒めた早田シェフ渾身の火鍋の素が、味の決め手。

広島県産カキの塩味煮込みそば。聖護院大根やレンコンなど野菜もたっぷり入る。メニューは一例

「牛脂を使い、辛みと香りを引き出すようじっくり炒めることがポイント」とは、早田シェフ。この“油使い”もこだわりのひとつ。油も食材のうちと考え、料理によって香りの異なる9種の油を使い分けている。

クラシックな中華料理を目指す一方で、有機野菜を積極的に取り入れ、化学調味料も一切使わない等々、その目線は、現在の中華をしっかりと捉えている。

ナマコの肉づめ海老子煮込み。10日間あまりもかけて戻したゼラチン質豊富。メニューは一例

奥様の祖父が営んでいた八百屋が『八百仙』。その跡地ではじめたからこの店名があるとか

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