やまとなでしこ 2015 〜極上の結婚〜 Vol.7

極上の結婚。 結婚相手のリスクヘッジは許されないのか。

前回までのあらすじ


27歳の桜子は「(並みの)結婚をした女は負け犬」と考え、持ち前の美貌と教養とセンスで「極上の結婚」を狙っている。某企業の次期社長のポジションにいる交際相手・隆弘を手堅く押さえつつ、更なる高みを目指し参加した食事会で、メディアに引っ張りだこの若き経営者・国分与一に出会う。手練の桜子は、狙い通り国分を射程圏内に押え、二人きりになったが・・

ふたりを乗せたタクシーが向かった先は・・

翌日会社に行くと、美穂と香織からランチのアポが入れられていた。

「12:00 要報告 @コンラッド東京28F」

汐留でゆっくりランチをしたいとき、桜子たちは、よくコンラッド東京28階にある中華『チャイナブルー』を使う。ほとんどの座席が海側を向いており、天井高8mもの巨大な窓からは浜離宮恩賜庭園の広大な緑が見渡せる。その先に続く海は太陽の日差しを受けてキラキラと輝いていた。

少し値は張るが、ゆったりした景色を見ながら食べる蟹肉入り焼きそばは絶品で、ほんの小一時間の休憩でもお値段以上の価値があると桜子は思っている。

定刻に行くと、遅刻魔の2人が既にお揃いだ。
桜子が腰を下ろすやいなや、美穂がぐっと顔を近づける。

「それで?あの後どうなったの?」

その顔は、まるでワイドショーから垂れ流されるゴシップに釘付けになる午後の主婦のよう。桜子は近くを通りがかったウエイターに注文を済まし、一呼吸おいて笑って答える。

「それでも何も、私はそんな浅はかな事はしません。」

納得しない様子の二人に、言葉を続ける。

「女にとって一線を越えることは、オセロでいうところの角を取られるようなものでしょう?そんな簡単にとらせるはずありません。」

香織が、さすがだわねぇ、とつぶやくと、すかさずしかめっ面の美穂の質問が飛んでくる。

「桜子、隆弘さんいるじゃない。丸の内の大手企業R社の次期社長の有力候補だよ。R社の社長夫人なんて、私だったら大事に大事にして、絶対に逃さないのになぁ。雑に扱ってるといつか痛い目見るわよ。」

桜子は笑って答える。

「大事に大事に?それも結構でしょう。けど、男女関係は、卵と一緒。大事に握りしめてると、ぐちゃっと無残に壊れちゃうものよ。」

美穂は、ぐぅと口をつぐむ。

「私は雑に扱ってるどころか、これ以上にないほど慎重に人生考えてるの。女の人生一筆書きで、後戻りはできないのよ。後になって、あぁ、あのときこうしておけばよかったなんて言ったって覆水盆に返らず。私は、その時に考え得るすべての可能性を冷静に判断した上で、決めたいだけ。」

美穂は、なるほどねぇ、と深く頷いたが、香織が睨みつけて制する。

「事業における転ばぬ先の杖は褒められるのに、人生かかった結婚のリスクヘッジは非難轟々なんて、本当人の世は住みづらいわ。」

焼きそばが運ばれてきて、桜子は景気良くすすりあげる。舌の上でとろける蟹の濃厚な甘みに、先ほどの非難めいた発言でさえ、楽園の珍獣の鳴き声のように可愛く感じる。大きな窓から差し込む陽光の柔らかさも手伝って桜子は、微笑みながらあくびをした。


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