身も心も酔わせる、二軒目の切り札 Vol.2

二軒目でのパークハイアット『ニューヨークバー』、その帰りのエレベーターの中で

先日、外苑前の『CORK』で、彼氏との関係が不安定であることを打ち明けてきた会社の同僚の由里子(30)。共に恵比寿に住んでいたため、タクシーで共に帰路に着いたが、その日は特に何もなく。だが、新卒時代からひそかに想いを寄せた彼女を奪う千載一遇のチャンス。勝負を賭けよう。

『CORK』で食事をした翌週の土曜日、四谷三丁目の中華『の弥七』に由里子を誘った。

「なかなか行ったことない和風寄りな中華だね」

「三田の『桃ノ木』出身のシェフが腕を奮っているらしい」

「そうなんだ!さすが雄太、よく知ってる!」

レストランに詳しい由里子の先をいこうと、この日も懸命に予習したのは言うまでもない。

時計を見るとまだ21時。二軒目に誘わない手はない。

「もう一軒行かない?開放感のあるBARとかさ」

「うん、任せる」

『の弥七』を出てタクシーを拾った。

「パークハイアットへ」

行き先を運転手に告げる。由里子は特に反応を示さなかった。

41Fの『ピークラウンジ』を通り過ぎ、52Fへ。エレベーターを開けると、眼前には東京の夜景が拡がる。

嘘のように天井が高く、抜群の開放感。都内にホテルのBAR数あれど、パークハイアットの『ニューヨークバー』ほど雰囲気のあるBARは見当たらない。

由里子は黙っている。おそらく、由里子ほどの遊び慣れた女であれば、一度や二度は来たことがある場所だろう。

「いつ来ても、素敵な場所ね」

案の定、男の影を感じさせることを呟いた。黙って耳を傾け続ける。

「今の彼氏にも、付き合う前に連れてきてもらったことがあるの。その時は窓際の席だった」

黙って相槌を打つことしかできない。やっと出たのがこの一言だった。

「今日はカウンターにしようか」

少しでも違う演出をして、彼女の思い出を塗り替えないといけない。

カウンターで見る由里子の横顔は憂いを帯びている。彼氏との関係で悩むのか、このBARがそれを思い起こさせてしまったか。

「雄太と結婚する女の子は、幸せかも。話をよく聞いてくれるし、女の子を大切にしてくれそう」

由里子は彼氏との思い出をなぞるだけではなく、僕との未来と天秤にかけているのかもしれない。なんて都合のいいことを妄想した。

「他の男性の話をされて、嫌な気持ちになるってことくらいわかってる。それでもあなたは私の話を黙って聞いてくれる」

どうしたことか褒め殺しが始まった。

一軒目の『の弥七』で由里子はビールを3杯くらい飲んた。『ニューヨークバー』ではカクテルに切り替えているが、酔いも回ってきているのだろう。力なく笑うその目は、助けを求めているようにも見える。

ここは勝負所だ。

僕はトイレに行くふりをして席を立ち、パークハイアットに空き部屋があるか聞いた。


会計を済ませ、由里子をエレベーターへエスコートする。帰るには42Fでエレベーターを乗り換えなければならない。僕は43Fを押した。由里子はそのことに気づかない。

43Fで止まり、エレベーターから降りた。

「あれ?」

由里子と僕がその後どうなったかは、読者のご想像に委ねよう。


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