SPECIAL TALK Vol.145

~留学を思いとどまり日本で学んだ文化が、世界で評価される武器になった~

金丸恭文氏 フューチャー株式会社 代表取締役会長
大阪府生まれ、鹿児島県育ち。1989年起業、代表取締役就任。日本ハンドボール協会会長。


活動15周年を迎える今年。新しいことに取り組みたい


舘鼻:伝統工芸の世界では、東京と地方で真逆の問題が起きています。東京のように市場があるエリアは、生産性が求められるがゆえに技術が発展しない。東京の工房に「技巧を凝らした一点物を作りましょう」と持ちかけても、「なんで、そんな大変なことをやる必要があるんだ」と断られる。

金丸:工業製品になってしまっているんですね。難しい作品を一点作るより、ほどほどのものを100個作ったほうが稼げますから。

舘鼻:そうです。逆に地方の工芸は、技術は高くても、職人さんの名前が全然表に出てこない。世界的なブランドに携わっていても、下請けの下請けみたいな位置付けで、「私はこれをやっています」と言えない契約になっているんです。

金丸:元請けだけが権利を持って、実際に手を動かしている末端の人が保護されない。国は製造業を推しているのだから、国家戦略としてこうした状況を変えるべきです。

舘鼻:全国に3,000人くらいしかいない伝統工芸士の称号を持っている人でも、子どもには「継がせたくない」というマインドです。僕は、作品を作ってくれた職人さんたちに、展覧会のレセプションに参加してもらっています。携わった作品がこういう場で発表され、メディアに載り、注目されるんだということを実感してもらいたいし、意識を変えてほしいからです。

金丸:デンマークでは、手に職をつけた職人と、一流大学を出て大企業に入った管理職の年俸の差がないらしいです。そういう国が、世界の競争力ランキングで日本より常に上位にいるということを、ちゃんと認識しないといけません。

舘鼻:でも、世の中も少しずつ変わっているんだなと、最近感じています。実は僕、中学校の美術の教科書に載ったんですよ。

金丸:そうなんですか!?美術の教科書なんて、つまらないイメージがありましたけど(笑)。

舘鼻:自分が載ったのをきっかけに、久々に教科書を見てみたんです。最初のページに凱旋門を布で包んだ、クリスト&ジャンヌ=クロード夫妻が載っていて、びっくりしました。

金丸:レオナルド・ダ・ヴィンチやピカソではなく?それは教科書を作った出版社と文科省を褒めなきゃいけませんね(笑)。

舘鼻:僕が紹介されたのは、伝統工芸×アートのセクションですが、現代アートもたくさん載っていましたね。「教科書的な勉強をしてもダメだよ」なんて言いますけど、教科書も進化しているんだなと。

金丸:ところで、舘鼻さん自身のこれからの展望は?

舘鼻:昨年が活動15周年だったんですね。2010年にガガさんとの仕事から始まり、ファッションの仕事を4〜5年やって。そのあと彫刻や絵画といった作家活動に本格的に移って、日本の工芸に注力して10年。

金丸:ひと区切り、という感じですか?

舘鼻:そうですね。2浪したので大学卒業が24歳だったんですけど、その年齢で世界的なミュージシャンと仕事をして、世界中に作品を届けることができた。ニューヨークのメトロポリタン美術館やロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館に作品を収めることもできた。だから言ってしまえば、子どもの頃の夢を早々に叶えてしまった状態なんです。

金丸:じゃあ、やりたいことが見つかれば、またそれに全力投球できると。

舘鼻:まさに。今は女子美術大学の特別招聘教授をしているんですが、秋には女子美アートミュージアムで15年間をまとめた展覧会を開催しました。そこからまた、新しいことをしていきたいという気持ちがすごくありますね。

金丸:素晴らしい。アーティストが日本でやっていくのは厳しいというお話でしたが、舘鼻さんのご活躍が多くの人に影響を与えて、よりよい環境になっていくように私も陰ながら応援しています。今日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。

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